第754話 初イベント!
「みんなで一つのことに向かって頑張っているなぁって感じられて、だから――」
「ああ、もういい。長い」
面倒臭そうにセイラの言葉をぶったぎったハルス。
セイラは、「むー」っと頬を膨らませるが、そこまで気分を悪くしているワケではなさそうだった。
二人の関係性は、ある程度かたまってきていて、
なんだか、熟年夫婦のようになっていた。
この『クソしょうもない関係性』に対して、
実はというと、ハルスは、そこまで不快感を覚えてはいなかった。
ハルス視点で言うと、セイラというガキは、文句なしの全力で鬱陶しい。
ただ、セイラという女は、空気が読める子なので、ハルスが本気で嫌がる事はしない。
『最善のバランス』とは言えないが、二人の関係は、
常に『決して悪いとはいえないバランス』を保っていた。
――そこで、MDデバイスがブルっと震えた。
何事かと、中身をチェックしてみると、
ハルスがボソっと、
「……どうやら、こいつには『イベントの情報』なんかも入ってくるみたいだな……便利なマジックアイテムだぜ」
お知らせがきていた。
1時間後に、『将棋大会』が開かれるという告知だった。
それを見たゼンは、
「この感じでいくと、次はジャンケン大会かと思ったけど、将棋か……つぅか、携帯ドラゴンで将棋のイベントなんてなかったけどなぁ」
すると、そこで、ハルスが、
「おい、ショーギってなんだ? お前、知っているのか?」
「……ああ、そっか。だよなぁ……んー、もしかして、これは、そっちの流れなのかな?」
「どういう意味だ?」
「ルールを知らないゲームで推理力・対応力・考察力をはかるパターン。……ある意味で、ニギリズシ系かな。となると、今の俺の立場はハンゾーか……」
「……スラングを多用するんじゃねぇ、うぜぇ。ちゃんと説明しろ」
「この世界の人間が全員ゼロスタートだとすると、俺が出た方がいいか……それとも、ハルスにルールを教えた方がいいか……まあ、両方でいいか。参加人数に制限はないらしいし」
ゼンは、ボソっとそうつぶやいてから、
「とりあえず、将棋ってのは、こう……駒をだな……歩が――王が――」
ゼン、説明中……
二分ほど、将棋についてのルール解説を受けたハルスは、
「……なるほど。シンプルで浅そうに見えて実は底深いテーブルゲームか」
脳を高速回転させながら、
「戦術にはどんなものがある?」
「棒銀とか、穴熊とか――」
説明中……
5分ほど、ザックリとした戦術解説を受けると、
ハルスは深くうなずいて、
「……なるほど。だいたい理解した。このゲームには、敗因はありそうだが、勝因はなさそうだな。どこまでいっても、相手のミスを待つしかない。……そういう忍耐ゲーム。そうだろう?」
「ぇ……いや、しらんけど、俺、そんなに将棋は詳しくないから」
「このゲームで強くなるには、どうするのがベストか……効率のいい鍛練法とかあるか?」
「一番てっとりばやいのは、やっぱり、詰め将棋かなぁ……もちろん、それだけで強くなれるってワケじゃないけど、結局、相手の王を詰むか、自分の王が詰まされるかってゲームだから、そこの『出来』と『知識』は大事なような気が――」
そこからも、ゼンは、ハルスに、将棋に関する情報を流した。
すると、15分もしないうちに、
「完全に理解した。仮に、今回のイベント参加者の中にルールを知っているヤツが混ざっていたとしても楽勝だな」
ニっと笑ってそう言った。
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