第753話 最効率の攻略法。
ゼン「……『効率』を求めるとなると、カジノかガチャの二択になってくるんだよなぁ……」
シグレ「そうやな。ただ、カジノするにもガチャするにも、課金ポイントがないと話にならへんで」
「ん? なんだ、お前ら……もしかして、この妙な試験について詳しかったりするのか?」
「詳しい……んーまあ、詳しいってほどでもないが」
「ホンマに詳しい人やと、知識やばいからなぁ」
どの界隈でもそうだが、ガチ勢のディープさはエゲつない。
『一日十数時間プレイを年単位で継続』とか『数千万や数億の課金は当たり前』とか。
そんな連中と比べれば、ここにいる二人(ゼン&シグレ)など『ライト層の表面をただよっているボーフラ』でしかない。
「何か知っているなら、説明しろ」
「説明……どういえばいいか……」
「詳しい説明はいらん。フーマーには『妙なアイテム』や『風習』が山ほどあった。どうせ、これも、その中の一つってだけだろ? だから、概要はいい。とにかく、この試験の攻略法を、知っているだけ教えろ」
「……えっとな……じゃあ、まず――」
そこで、ゼンは、ハルスに対し、自分が知っている『携帯ドラゴンの攻略法』を伝えた。
『理解できないであろう範囲(スマホゲーに酷似しているという点)』はなるべく避けて、『携帯ドラゴンを高速で強くするための方法』だけを選別して伝えていく。
すると、ハルスは、この携帯ドラゴンというゲームを一瞬で理解して、
「その課金ポイントが重要だな……ようするに金で強化パーツを買うってことだろ……そのポイントを買うための金に、手持ちの金貨がそのまま使えるのかどうか……」
「その辺が、現状やと、いまいちわからへんねんなぁ」
喋りながらも、店に向かっていた一行。
街のいたる所に店は構えられており、選ぶだけでも一苦労。
テキトーに、近場の店に入ると、中は、祭りのクジ屋のようになっており、
奥に店主が一人いて、その周辺に、将棋の駒のようなチップが山ほどおいてあった。
チップには、特に何も書かれていないが、
MDデバイスでスキャンすると、どのような効果がある強化パーツなのか一発でわかった。
「……一番安いのが……100MDPで、効果は『攻撃力を1%上げる』か……」
「MDP……ポイントの形式は一緒やな」
「そうだな……スマホ版だと、1円=1MDPだったが……」
そこで、ゼンは、店主に、
「あのさぁ、あんた、MDPを入手する方法って知ってる?」
言ってから、心の中でつぶやく。
(頼むから『MDP? なんだそりゃ』って言わないでくれよ……お前、MDPで商売してんだからな?)
「MDPを入手する方法は、大きくわけて三つある。この世界で入手したアイテムを売る。大会などのイベントに参加して賞金を得る。クエストをこなして対価を得る」
「……非常にAI的で丁寧な対応、ありがとう」
感謝の念をつげてから、
ゼンはイタズラ半分で、
「ところで、あんた、神様についてどう思う?」
「神様? なんだそりゃ」
「うるせぇよ」
半笑いで言葉を返すゼン。
約束されていた『お約束のやりとり』を経てから、
「ちなみに、MDPって、この金貨と交換できる?」
「できない」
「……はい、了解……」
そこで、ゼンはハルスと目線をあわせ、
「というわけで、今は買えないな。完全に無駄足だ」
「……『価格』と『大体の上昇率』と『MDPの入手方法』が分かったんだ……充分な成果だろ」
言って、ハルスは、さっさと店を出る。
そのあとについていくゼンとシグレとセイラ。
セイラが、
「ハル、これからどうする?」
テテテっと、ハルスの袖をつかみながら、そう声をかけたセイラ。
心なしか笑顔になっている。
「なんか、お前、楽しそうだな」
「うん、じつは、ちょっと楽しいなぁって思っているの……ハルが言ったように、このルールなら、私でも役に立てそうだし、痛い想いはしなさそうだし、それに、みんなで一つのことに向かって頑張っているなぁって感じられて、だから――」
「ああ、もういい。長い」
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