第467話 予選の難易度
「アホか……パラソルモンは地下15階までの――」
「信じる信じないは好きにすればいい。『信じろ』と強制する気も『信じてください』とお願いする気もない」
(こいつ、本当にダンジョンモンスターか? それにしちゃ、妙に……)
「ちなみに、これから、私は、『この迷宮攻略のヒントをいくつか述べていくつもり』なのだが、『もう一度、今のように遮(さえぎ)った』ら、その時点で私は口を閉じる。もろもろふくめて、好きな道を選択するがいい」
「……っ」
そんな事を言われて、ハルスは黙った。
ヒントというモノの信ぴょう性はイマイチ微妙だが、これが試験である以上、『そういう配慮があってもおかしくない』とも思ったゆえ。
(99階ってのは、間違いなくブラフ……パラソルモンは15階まで。隠しフロアがあったとしても、プラスで二階くらいが精々。ダンジョンってのはそういうもの。……ただ、俺が、『それ』を知っているのは、俺が、世界最強の勇者だから。冒険者ですらないその辺の連中は、パラソルモンクラスの最高位迷宮には入れないから、パラソルモンの最深部が何階かなんか知るわけがない……)
Q 本とかで残っていないの?
A パラソルモンクラスの迷宮に関する文献ともなれば、フーマーの大学校に蔵されている禁書クラス。
(つまり、先の発言は、冒険者志望者の心を折るハッタリ、あるいは、『99階をかけあがるなんて出来ないから他の方法を探せ』という、ある種安直なメッセージ……となれば、ヒントってやつも、『言葉そのものは信用すべきじゃない』だろうが、『ウソの方向性から見えてくる本物の突破口』はなくもないってところか……)
高速で思考し、結論が出たのとほぼ同じタイミングで、
ヘルズ覇鬼が、その『ヒントとやら』を語りだす。
「ここから出るには、地上を目指し、一階ずつ上がっていくしかない。素通りできる階層はない。全ての階層で、私のようなボスが沸く。ボスを倒さない限り、上への道は開かない。……つまり、君たちがここから出ようとすれば、99回にも及ぶ戦闘に勝利しなければいけないということだ」
それを聞いて、ハルスは、さすがに噴き出した。
(予選ごときで、そんな高難易度があってたまるか。本戦だって、そこまでの難易度は要求されねぇよ。そんなアホみたいな試験じゃ、誰も受からねぇじゃねぇか。この俺だって普通に無理だ)
ということは?
(……つまり、本当の試験内容は、こいつを殺す事じゃない……何をすれば地上に戻れるのか、それを的確に見極めること……)
さらに、頭が高速で回転する。
(普通の冒険者志望のやつじゃあ、何をしたって、豪覇鬼に勝てる訳がねぇ。いくらクジで『27分の1の最悪』を引いたからって、それでも、絶対合格不可能な内容の試験はありえない。それは、『冒険者試験の倫理』に、ひいては『フーマーの理念』に反している。……確定。こいつに勝つことは合格条件じゃない……となれば、上へと続く他の道が……)
考えていると、ヘルズ覇鬼(勇者は豪覇鬼だと誤解している)が、
「それでは、はじめよう。最後に、一つだけおせっかいを。……私一体に全力を尽くすのも結構だが、それでは最後まで生き残ることはできないだろう」
その言葉を最後に、刀を構え、腰を落とした。
そして、ダっと地面を蹴って、こちらに襲いかかってくる。
ヘルズ覇鬼は、その途中で叫ぶ。
「数の不利! 戦力的には貴様らの方が上!」
ヘルズ覇鬼は一体。
それに対峙するのは、ゼン・シグレ・ハルス・セイラ・ニーの五名。
内一名は、ド級の切札を隠し持っている。
「私は負けるだろう! しかし、ただ殺されてやるつもりはない! せめて、一人でも! より多くの傷を! そのための定石は、もちろん――っ!」
『VS複数』の定石。
『よりはやく・より少ない労力で殺せるヤツ』から消していく。
つまり、ヘルズ覇鬼の狙いは、
――セイラの瞬殺!
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