第468話 勇者VSヘルズ覇鬼
理解すると同時、ハルスは叫ぶ。
「ちぃいっ! まあ、だろうなぁ!」
剣を抜いて、セイラをかばいながら、ヘルズ覇鬼の長刀を受けたハルス。
ギィンッと、鈍い音と同時に熱い火花を散らす。
ヘルズ覇鬼が『迷いなくセイラを狙ってきたこと』に対し、
ハルスは、決して、『卑怯だ』などとは思わない。
『勝つ』ためには当たり前の一手。
つまり、ここで大事なことは、相手が『勝つ』ことを目的に行動しているという事。
ギィンッ、キィンッッと――熱さを伴う鈍さで、けれども鋭い硬質な音をはじく。
セイラを狙うヘルズ覇鬼と、セイラの盾になりながら闘うハルス。
ハルスと、ヘルズ覇鬼の剣戟は六手で終わった。
時間にすれば三秒を切る、非常に短い攻防だったが、互いに互いの力量を理解した。
(っっ! まっ、待て待て待て……こいつ、俺より遥かに強い……生命を超越していやがるっ! ぁ、ありえねぇ、マジか……いったい、どんなアリア・ギアスを積みやがった! ……『絶死』か? それとも『運命』か? なんであれ、これは勝てん……っ)
冷や汗が溢れた。
六手も合わせれば、『何をしても勝てない』という事くらいは分かる。
少なくとも、ただ愚直に剣を合わせていても永遠に届かないという事は理解できた。
(――『このダンジョン内限定』、『今日だけの命』、『無数に捧げた魂魄』……何を積んだか知らんが、仮にこの鬼が『伝説の豪覇鬼』だとしても、この強さは異常……ぶっちゃけ、スリーピース・カースソルジャーよりも強ぇ)
『特殊カスタム』を受けている『このヘルズ覇鬼』の存在値は『150』で、『戦闘力』に関してはハナクソ以下。
仮に、『このヘルズ覇鬼』の総合点数を『100点』だとした場合、
ハルスの点数は『70点』といったところ。
――ちなみに、その基準でカースソルジャーを測れば、
一体だと『65点』で三体が揃うと『95点』くらい。
――『彼我の力量差に対する理解』を経て動揺するハルスに、ヘルズ覇鬼は、
「かばう、という選択が『最優先』か……いい情報を得た」
言いながら、ゼンたちにも意識を向けつつ、
バックステップで、ハルスから距離をとり、
「魔法は好きじゃないが……言っていられないのでね」
などと言ってから、刀に、
「跳空斬ランク7」
(ら、ランク7だと?! うそだろ、豪覇鬼ってのは、そこまでの魔法が使えんのか?! くっ……)
ヘルズ覇鬼の刀が青く光る。
その輝きは、ハルスの顔も青くさせた。
(ぃ、いいかげんにしやがれってんだ! これ、予選だろ?! たかが予選で、あんなガチ積みした伝説級のバケモノを投入してくるなんざ、フーマーはマジで何を考えてんだ……っ! イカれた国だとは思っていたが、まさか、ここまでのサイコジャンキーだったとは……っ)
ハルスが歯ぎしりしている間、
ヘルズ覇鬼は、下段に構え、その場で、グワと刀を振り上げた。
その斬撃は高速で空に向かって飛び、
途中で、急激にクンッッと曲がって、セイラに向かって落ちてきた。
「し、しんどいマネをぉ! くそがぁ!」
全力でセイラをかばうハルス。
上からの攻撃を防いだと思った直後、
続けて、左右左と3回、跳空斬が放たれた。
どうにか、全ての攻撃からセイラを護るハルスに、
「ありがたい。お前がこの中では、間違いなく最も強い……そんな貴様を抑えながら、一番のザコを狙える……この幸運……あるいは、私だけで、貴様ら全員を制圧できるかもしれないな」
ふざけた事を言いながら、その間も、攻撃の手を緩めないヘルズ覇鬼。
多角的にセイラを狙いつつ、ハルスを削っていく。
ハルスとセイラだけに集中して、ゼンとシグレに対しては『時折睨みをきかせて牽制する』という程度にとどめているヘルズ覇鬼。
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