第466話 99階


 ――真パラソルモンの地下迷宮『地下99階』――



 飛ばされてすぐ、ハルスは、周囲を確認し、だいたい何階くらいに飛ばされたのだろうかと推測を開始する。


 パラソルモンは、二年前に一度攻略している。

 記憶はバッチリ残っている。


 ――だが、


(……前にきた時と……様子が違う……? なんだ? この異常に広い空間は……前の探索時には見つからなかった隠し部屋か?)


 妙に広い空間。

 そして、感じる、ビリっとした寒気。


 嫌な予感。


 ハルスが、パラソルモンの変化を警戒していると、背後にいるゼンとシグレが、


「ここが、何とかの地下迷宮か……」


「パラソルモンな。いやぁ、しかし、ついに、あたしらもダンジョン探索に挑戦かぁ……なんか、ワクワクするなぁ」


「探索っつぅか、ここから出るだけだろ?」


「まあ、ぶっちゃけそうなんやけど……もりさげるなぁ。もっと、この、もろもろの異世界感を楽しんでいこうや」


(んな余裕はねぇよ……)


 もし、この冒険者試験で不合格になったら、目の前にいる『この女』は無間地獄に落ちてしまう。

 そんな状態で世界を楽しめるほど、ゼンは楽天家じゃない。


 だが、シグレがこう言っているのは、『シグレがアンポンタンだから』ではなく、『自分(ゼン)に対して気を使っているから』であり、その事実に気付けないほどゼンもアンポンタンではないので、


「そうだな……ああ、楽しもう」


 ゼンは、無理して笑顔をつくりながらそう言う。


 その笑顔に、シグレはキュンとする。

 高潔で、カッコよくて、可愛くて、愛おしい。

 本当に、全てがドストライク。





 ――などと、そんな、妙な空気感を出している二人を横目に、

 ハルスが、ここに飛ばされて以降、ずっと絶えず自分にくっついているセイラに、


「言うまでもないが、勝手に動くなよ。常に俺の視界にいろ。お前が死んだら、俺も死ぬってことを忘れるな」


「うん、だいじょうぶ。絶対に離れない」


 そう言って、よりハルスとの距離を縮めるセイラ。


 と、その時、


 彼・彼女らの目の前に、ジオメトリが浮かんだ。


 出現したのは、長い刀を持つ、凶悪なオーラを発している鬼。

 ヘルズ覇鬼。

 その威容を目の当たりにしたハルスは、ブワっと冷や汗を出し。


(……っ! ……あ、あれは……覇鬼……いや、違う……あれは、もっと上……まさか……豪覇鬼……?!)


 実際には、豪覇鬼よりも更に一つ上のヘルズ覇鬼。

 だが、ヘルズ覇鬼なんて存在はハルスの知識にない。


 ハルスは、モンスターに関する高次の知識を、大学校にいる時、それなりに得ている。

 エックスにおける鬼種の最高位は『覇鬼』。

 最低個体値でもレベル70を超える伝説のモンスター(存在値は80オーバー)。

 現地人からすれば、覇鬼でも、異常な領域のスーパーモンスターだが、

 ハルスは、フーマーの大学校で、『それ以上の鬼もいる』と習った。


 それが、豪覇鬼。

 最低でもレベル100を超えるという伝説中の伝説のゴッドモンスター。

 ステータスだけなら勇者よりも遥かに強いだろうと言われている神のバケモノ。


 『アホか、そんなモンスターがいるわけねぇだろ』と、ハルスは、まったく信じていなかった――が、



(ご、豪覇鬼なんてものが……じ、実在したとは……というか、そんなもんを試験に組み込むって……フーマーの委員会はラリってんのか……)



 ハルスがおののいていると、最低個体でも『存在値170』を超える『ヘルズ覇鬼』は、


「ここはパラソルモンの地下迷宮、地下99階」


 おどろくほど流暢にそう言った。


 ※ ヘルズ覇鬼のINTでは、ここまで流暢に喋れないのだが、特別にカスタムされたヘルズ覇鬼なので、『ネオヘルズ覇鬼なみ』に喋れる。


 ――ヘルズ覇鬼のセリフを聞いて、ハルスが、


「は? 99?!」


 眉間にしわをよせて叫んだ。





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