第465話 大凶
事務的なその質問に対し、センは、シューリとの『無駄にカロリーを消耗する会話』で疲れた頭を切り変えて、
「そうでーす」
ゆるく答えると、
「ふむ。なら、代表一人がこのクジを引いてくれ。それによって、どこのダンジョンに飛ばされるか決まる。飛ばされた先のダンジョンから脱出し、ここまで戻ってくること。それが予選の内容だ」
一言一句変わらないその流れから、サクっとくじをひくセン。
ここまでは『ゼンの時』と、顔つきから発言から全く同じだった試験官だが、
「……ん?」
センがひいたくじを見て、少しだけまゆをひそめた。
センが、
「どーかしましたぁ?」
尋ねると、
「いや……ついさっき飛んだばかりの受験生と、場所がかぶっていたので、少し驚いただけ……ぁあ、いや、君たちには関係がないことだ、すまない」
試験官は、ンンとノドを整えてから、
「君たちが挑むダンジョンは、全27種類あるダンジョンのうち、最も難易度が高いパラソルモンの地下迷宮」
それを受けて、センは、
(27分の1が二連続……729分の1の確率……まあ、確かに珍しいな。だが、問題はそこじゃねぇ。シューリを率いている俺が、大吉以外を引いたってのが問題だ。シューリの幸運値はデフォルトでマックス。大凶を引くなんてありえねぇ)
このくじでは、扉からの『下らないイチャモン(正規のルートではありません)』を避けるため、運命操作等は一切行わなかった。
それでも、シューリが側にいる状態では、必ず『幸運』を引くはず。
いったい――
(俺ら神々からすれば、最難関だろうが何だろうが関係ないから、『女神の幸運』が発動しなかった? まあ、その可能性もゼロじゃないが……しかし、この場合、『シューリのチートパッシブが空気を読んで自重した』と仮定するより『誰かが気合いの入った上等をかましてきた』と考えた方が妥当だろう……つまり、問題となってくるのは『誰が、なんの目的』で――)
センが頭の中で考えていると、
試験官が、
「この奥の部屋から転移してもらう訳だが、今なら辞退は可能。さあ、どうする? ちなみに、当たり前だが、ダンジョンの奥で死んだとしても、委員会は責任をとらない。すべて自己責任だ。死ぬのが嫌なら、ここは退いて、来年また挑戦したほうがいい」
例の『君は帰ってもいいし、帰らなくてもいい』のくだりに入った。
試験官の無礼な発言を受けて、アダムがイラっとした顔となり、
「……主上様が、パラソルモン探索ごときで死ぬ訳ないだろ、アホがぁ」
イライラした口調でボソボソとそうつぶやく。
センから『今の自分の力が、どの次元にあるかを、常に考えて生きろ。俺が理由であったとしても、あまり感情をむき出しにするな』とクギを刺されているので、
さすがに、『こんなカスみたいな試験官』相手に本気でブチギレたりはしないが、
敬愛する御方に対する不敬な発言にはイラだちで反応してしまう。
ここまでに経験した『色々』の『全て』で、『アダムの心』はセンに撃ち抜かれており、結果、センに対する忠誠心が、天元突破ゲージをいくつも破壊して、もう収集がつかないという状態になっている。
もはや、今となっては、人だけではなく、
動物にも虫にも、
――なんだったら水や雲や空気なんかも含め、
この世の全てに対し、『頭が高い、貴様ら、この御方をどなたと心得る、その尊い御威光に触れられたという幸運に咽(むせ)び泣きながら全力で平伏さんかい』と思うようになってきた。
狂信者というより、もはや、ただのヤバいヤツである。
「もちろん、挑戦しまーす。さあ、大変だぁ。クリアできるかなぁ。ドキドキ」
などと言いながら、小指でぽりぽりと耳をかくセン!
続けて、
「もう、オイちゃん、恐怖のあまり膝がガクガク震えていまちゅよ」
などと言いつつ枝毛を探しているシューリ!
二人のノリに追従すべきか、一瞬だけ悩んだものの、
タイミングを逃してしまい、結局押し黙ったアダム!
最難関のダンジョン攻略を前にして、気合い充分な3人!
――ついに、センの冒険者試験の予選がはじまる。
冒険者試験!!
それは、年に一回だけ行われる非常に過酷な試験!
合格率は、数百万人に一人という超低確率!
予選を通るだけでも大変厳しく、もし一次を突破できれば、それだけでも、経歴が輝き、人生の難易度が2段階は下がる夢の試験!!
はたして、センはその厳しい冒険者試験をクリアできるか!
人生のプラチナチケット(冒険の書)を手に入れられるのか!
これから、センの前に立ちふさがる、無数のハードル!
そのすべてが、センの魂を削り取る茨の道!
センの手は、果たして、栄光を掴めるのか!
どうなるセン!
がんばれセン!
アクビするなセン!
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