第6話 『無崎の脳内で創造されたステージ』で踊る、超高校級のバケモノたち。


 昏睡していた二年弱の間、

 無崎は、ずっと夢を見ていた。


(……野究カードと異世界をずっと創っている夢……あれ、なんだったんだろうな。それなりに楽しかったから、夢中で創っていたけど……なんで、あんな夢を見たんだろ。俺、心の奥ではゲームとか創りたがっているのかな?)


 昼休みに、無崎は、

 『人のいない屋上』で、

 ホットドッグをかじりながら、心の中で、


(野究カード……ああいうゲームがあったら、面白いと思うんだけどなぁ)


 心の中でブツブツと、


(ほんと、いい設定だと思うんだよなぁ。野究カード)


 自分が創造した『異能』について思い出す。

 野究カードの種類は大別すると三種類。


 『汎用野究カード』(ワナを解除したり、時間を止めたり、傷を癒したり。様々)

 『武装野究カード』(ストレートブレードやブレイキングウェポンを召喚する)

 『機動野究カード』(ジャイロブレードやスペシャルブレイキングウェポンが搭載された『ピッチングマシン』という搭乗型の兵器を召喚し操縦する事ができる)


 ――『ギガロ粒子』と呼ばれる特殊なエネルギーを原動力として動く特異な未来兵器が封印されたオーパーツ。

 通称、野究カード。


 重厚なマシンガンだろうと、巨大なロボ兵器であろうと、一枚のカード状にして持ち運ぶ事が出来、いつでも自由にカード化・兵器化できるという夢のアイテム。


(固有名詞は多いけど、全部、野球の変換だから、イメージがしやすいって点がミソなんだよなぁ。ストレートブレードは、文字通り、ズバっと相手を切りつける剣。150ギロのストレートブレードは超強力! うん、イメージしやすい)


 ――『ストレートブレード』(ギガロ粒子の放出量が多ければ多いほど切れ味と破壊力が増す近接兵器)


(変化球をモチーフにしたブレイキングウェポンは、ストレートブレードより一発一発の火力は劣るけど、遠距離から攻撃できる射撃武器)


 ――『ブレイキングウェポン』(ギガロ粒子を圧縮して撃ち出す中~遠距離兵器)


(で、最強のアイテムである『ピッチングマシン』は、男子のロマン溢れる派手なロボット兵器。『200ギロのストレートブレード』や『ハイランクのナックルランチャー』をバンバン使って戦場を盛り上げる。基本は、武装野究カードで闘うんだけど、ここぞって時は、ピッチングマシンで大暴れ、みたいな)


 無崎は、野究カードの基本コンセプトを思い出しながら、


(舞台設定は、この創世学園みたいなマンモス高校でぇ、実は学園内のあちこちに、異世界へと繋がっている扉があってぇ、選ばれた100人くらいの優秀な生徒が、日夜、異世界に渡航しながら、情報を集めてぇ、そこに隠されている野究カードを手に入れようと頑張っていてぇ、時には、野究カードの奪い合いになってぇ、ピッチングマシンや武装野究カードを駆使して戦っている、みたいな。で、最終的に勝ち残った人は、究極のアイテム『携帯ドラゴン(手乗りサイズのドラゴンの形状をしている、生きたスマホ)』を獲得して、世界の王になる、みたいな。……うーん、やっぱり、いいなぁ。誰か、こういうゲームを創ってくれないかなぁ)


 色々と妄想を膨らませながら、爽やかな風を浴びていた。

 ……その時、ふと下を見た無崎は、

 『中庭を歩いているとんでもない美少女』を発見。


(――ん……ぉ、うわ?! す、すげぇ、何、あの黒髪の超美人。すげぇ)


 つい、柵から身を乗り出してしまう。

 足首まで届く漆黒の髪をなびかせている超かっこいい美少女。


 180センチ近い細身の高身長。

 足が非常に長く、腰の位置が尋常じゃなく高い。

 そのキっとした顔つきからは、可愛らしさなどはまったく感じないが、彼女を見て美人じゃないと答える者は皆無だろう。


(うわぁ、高校生になると、あんな美人さんとかもいるんだぁ。高校入学直前に昏睡から目覚めてよかったぁ。ああ、ほんと、超絶美しいなぁ。あんな人が彼女とかだったら最高だなぁ。まあ、俺なんか、絶対に相手にされないだろうけどねぇ……ん?)


 童貞臭い事を心の中で呟いていると、

 その黒髪美女に、超絶的なイケメンが声をかけていた。


(うーわ、あの人、カッケェエエエ!! なに? ジャニーズ?)


 黒髪美少女に美形力で全くヒケを取らない完璧イケメンが、

 真剣な表情で、その黒髪美少女と会話をしている。


 その光景を目の当たりにして、

 無崎は、


「……は、はは……はいはい……」


 つい、乾いた笑い声をあげてしまう。


(なるほど、彼氏かぁ。まあ、だよねぇ。そりゃ、いるわなぁ、あのレベルの美女になれば、超カッコイイ彼氏の一人や二人)


 諦念(ていねん)のタメ息だけが、

 僅(わず)かにたゆたって、

 ホワホワと霧散していく。


(美人っていう存在は、俺みたいな空気ボッチとは縁遠い存在。わかっているよ、そんな事くらい。はっはっはぁーっと。……あーあ、嫌になっちゃうなぁ、ほんと。俺も、こんなフツメンじゃなくて、ああいうイケメンで生まれてきてればなぁ……異世界転生して、カッコイイ男に生まれ変わりたいなぁ……)


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