5作目 (カクヨム版)新米薬師の診療録

https://kakuyomu.jp/works/16817330663063603491

第17話〜18話https://kakuyomu.jp/works/16817330663063603491/episodes/16817330665166994016


織姫みかん様

https://kakuyomu.jp/users/mikan-orihime


 新米薬師のソフィアが、医療資源の少ない村(医師がいる街まで馬車で2日)で起きた事故に奮闘する姿が魅力的でした。その中で傷病者の様々な心理状況、ソフィアの必死で誠実な対応、協力してくれる村の人々の人柄が見えて、まるでその場にいるような臨場感がありました。

 成長物語とのことで、ぜひ応援したくなる主人公だと思いました。


 今回は「医療に関連する部分」と「文章や内容も含めての」部分で、気づいた点をお知らせいたします。


③"特に女性の方は聞いた通り左腕が上腕より下から千切れています"


 上腕という言葉は正確なのですが、ひょっとしたらピンとこない読者もいるかもしれません。"肘から先がありません" "肘から先がちぎれています"といった表現の方がイメージしやすいかもしれません。


④"「お、おい。ソフィーちゃん、そっちは――」

 村の誰かが骨折の疑いがある男性に近づく私に声をかけます。まぁ、普通はそうだよね。でもこれには理由があるんですよ"


 この「そっちは——」というのは、「なんで軽症の人を優先するんだ?」といった疑問でしょうか。もしそうであれば少し付け加えた方がわかりやすいかもしれません


"「ソフィーちゃん、そっちの男はまだ大丈夫だからあっちの——」"

"……普通はそうだよね、なんで症状の軽い人のところに先に行くのかって。でもこれには……"


"呼びかけにも反応しないというもう一人の男性は脈が取れず、呼吸もしていない。救命措置をすれば助かるかもしれないけど、この人の処置は後回しにせざるを得ないな"


 これはいわゆる黒タッグということですね。トリアージの中で非常に難しく、心苦しい判断になります。一方でトリアージについて何らかの知識がない読者にはピンとこない可能性があります。後回しにするということは大丈夫と判断したのかな、と誤解される可能性があります。こちらについては最後に述べます。


⑨ ○判定:

"切り傷の縫合程度なら師匠から教わっているけど"


 師匠はやはり医学的知識が豊富なのだと思いました。傷の縫合は通常専用の針と糸を使用して行いますし、それなりにやりなれていないと難しい処置と考えます。もちろん設定にファンタジーが入っていれば現実にそぐわなくても構わないのですが、その場合はやはり何らかの説明をさりげなく入れた方がリアリティが増すと思われます。


例:この村では特産品の製作過程で切り傷が多いため、処置には慣れている。

例:得意とする特殊な薬を使うために縫合はいつもできるようにしてある


などです。


 もし縫合というものにこだわりがなければ


"傷口の圧迫止血程度なら師匠から教わっているけど"


 でもいいかもしれません。例えば日本赤十字が行っている、一般人向けの救命処置講習でも圧迫止血は教えますし、それだけで何もしないよりはだいぶ時間は稼げます。


コメント:ナイフ、縛る、のくだりはとてもいいですね。緊迫した状況だからこそ、起きてしまう行動、混乱、その様子は非常にうまく描写されています。


"「ソフィーちゃん、そこの男はどうするんだい」

 「この人は、運べません。死亡を確認しました。外傷はありませんが首の骨が折れてます。頭から落ちたようですね」

 「そうか。残りは助かるのか?」"


 通常であれば、人がすでに死んでいる、ということは凄まじい衝撃的な事実だと思われます。「そうか……」という点が少し飲み込みが早いような気がいたしました。

 他の部分を拝読し、自分だったらどうするか考えてみました。


代替案:

「……死亡を確認しました」

「何だって? 助けてやってくれよ、怪我もなさそうだし、何とかなるんじゃないのかよ」

「いいえ、残念ですが助かりません。すでに呼吸と脈も触れません、おそらく頭から落ちて首の骨が折れたのでしょう」


 見た目は血も出ていないし、おそらく普通の倒れているだけに見えるかと思います(首がちぎれている、全身がぐちゃぐちゃになってしまっている、などであれば別ですが)。そこにソフィアがきっぱりと「死んでますので運べません」と言い切ります。すると相手は驚くはずです、その後にその理由を説明してあげると読者としても、流れがスムーズに入ってきて、状況を理解しやすくなります。


 これだけの悲惨な状況を目にしても冷静にしかも動揺することなく凛々しく立ち向かっているソフィアは立派だと思います。一方で、これだけだと、少し冷酷な機械的な印象も否めません。もしさらにソフィアのキャラクターを膨らますとしたら、見た目は冷静にしっかりと対応しながら、本心は実はすごく怯えていて、それを必死で抑えている、といった描写があるとよりリアリティがあるだけでなく、読者としても共感を得るポイントになるかもしれません。


 特に黒タッグの判断は非常に残酷で、辛い判断ではあるものの、しなければならないものです。この責任をソフィアはしっかりと受け止める、でも心の中では泣いている、となると読んでいる人はよりソフィアの気持ちに寄り添っていくようになるかもしれません。


 あくまで自分だったらどうするか、と考え代替案を考えてみました。


代替案

「呼吸していない……まさか、脈は?」

 脈もない、どうしよう、首も変な方向に曲がっているから、もう死んでしまっているかもしれない。でももしまだ生きていたら……? ここで見捨てたらこの人の最後の助かる見込みを捨ててしまうことになってしまう。

 今から心配蘇生をすればまだ助かるかもしれない、ダメで元々でやってみよう、胸に手を置こうとしたら


「おーい、こっちの女性はすごい出血してるぞ!」


 どうする? どっちを優先する? 悩む、急がなきゃ、時間がない。もう一度脈を確認、ぐっとこらえて、(だめだ、もうこの人は助からない。助けられる人を優先しなきゃ)黒タッグ判断。

「ごめんなさい、全ての処置が終わったらまた来ますからね(死者に対する声掛け)」


 といった流れでしょうか。


まとめ

 非常に臨場感のある緊迫したシーンで、雰囲気がとても伝わってきました。ソフィアのキャラクターも魅力的で、このお話の世界観にもっと触れてみたいと感じました。ただでさえ魅力的なシーンですが、さらにもっと良くなれる可能性も感じました。そして非常によく勉強されたのだな、ということを実感しました。そこからも作品に対する熱意を感じました。

 これからの織姫みかん様とソフィアのご活躍を期待しております。

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