檸檬

功琉偉 つばさ

檸檬みたいな僕と檸檬好きの君。

「なに食べてるの?」


「なにって…レモンだよ。」


友達が早弁をして体育館に遊びに行っている中、それに乗り遅れた僕は一人お弁当を空き教室で食べようとしたらレモンを丸かじりしている君がいた。


「いやレモンだけどさ… レモンだよ。」


「そう。レモン。それがどうかしたの?」


「いや… レモンって… 今昼休みだよ。」


「うん。そうだね。」


「レモンの丸かじりって… 大丈夫? 普通レモンってレモン汁にしたりして唐揚げとかにかけるものじゃないの?」


「なにが大丈夫?なのさ。」


そういうと君は一呼吸おいてこう言った。


「レモンにはビタミンCをはじめ、β-クリプトキサンチンやクエン酸が豊富に含まれており、抗酸化作用や疲労回復効果が期待ができる。また、レモンの皮にもリモネンと呼ばれる香気成分があり、リラックスしたいときに役立つ。」


「うん。」


「知ってた?レモンって果物なんだよ。 だから別に私がこのレモンを丸かじりしてたっていいの。」


「まあ。うん。」


そんなことを言われても、正論だがなにか論点がずれているような気がする。


「あとね、レモンを漢字で書くと木偏に丁寧の寧、と木偏に中国の秦の将軍の蒙恬の蒙で檸檬れもんなんだよ。 もともとは中国の生薬のネイモウ《檸檬》に英語のLemonを当て字して、ネイモウから檸檬になったんだって。」


「そう…なんだ。」


「で、なに?それがどうかしたの?」


「檸檬って酸っぱくない?皮のところはなんか苦い感じだと思うけど…」


「だ〜か〜ら。言ったでしょ。檸檬は果物で一応みかんとかの仲間の柑橘類なんだから。 まあ少し酸っぱくて苦いけど私は好きよ。 なんなら食べてみる?」


「いや、僕はいいかな。」


「食べてみて!」


そう言って檸檬の切れ端を口に突っ込まれた。


「うっ すっぱい…」


「そんな変な顔しなくてもいいでしょ。 まあ疲れは取れるよ。」


「う、うん。」


「あれ?みんなと一緒に体育館でバスケしなくていいの?」


急に君は話題を変えてきた。


「うん。弁当食べてなかったし、それに僕ああいう騒がしいこと

苦手なんだ。」


「私も。なんかああいうの楽しいけど疲れちゃう。 み〜んなああいうことが好きらしくて私ついていけないんだよね。」


「檸檬って確か地中海式農業だから寒いのはだめだったよね。」


「そうだね。」


「だから… まあ… うん。 一緒にお昼食べていい?」


「いいけど… でだから何なのよ。」


「これはその…なんというか…」


「私の檸檬愛に合わせようとしてくれたんだろうけど、なれないことはあまりするもんじゃないよ。」


クラスでずっと一匹狼で檸檬みたいに酸っぱく、苦い君が

実はずっと僕の目にはきらめいて見えた… みたいなことは言えたもんじゃない。

だからなんか檸檬を絡めて話を続けようと思ったけど無理だった。


「なによ。なんか言いなさいよ。」


「まあ、ご飯食べよう。」


「私はもう殆ど食べ終わってるよ。 本っ当におかしいの。」


そう言って君は笑った。

そんな君を見てただ一つ、檸檬に纏わる話を思い出した。

 

「そういえば…僕、たぶん檸檬みたいな人だな〜」


意味深に言ってみた。


「なに言ってるの?馬鹿じゃないの?」


流石に檸檬好きの君でも伝わんなかったらしい。

今はまだ伝わらなくていいでもいつかは伝えたい。

檸檬の花言葉は『心からの思慕』『愛に忠実』『誠実な愛』だ。

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檸檬 功琉偉 つばさ @Wing961

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