第3話
教室に戻って何人かに声をかけられたあと、僕は自分の席に座る。グラウンド側から2列目前から3番目といういわゆる普通の席が僕の席だ。僕にとってこの席は、斜め前に石田いる以外に特徴が特にない。可もなく不可もなくといった感じだ。
その後は普通に授業を受けて、あっという間に放課後になった。保健室に行くと先客がいた。見覚えがある男の子、たしか体育の授業で見学していた子だ。小学校で見た記憶がないにも関わらず、すぐにその姿を思い出せる。包帯の巻かれた彼の足はあまりにも印象的だった。彼の顔に目がいく。中性的な顔で吸い込まれそうな瞳を持っている。ん、瞳?ガン見していたところ、彼がこっちを向いて目があったらしい。誤魔化すためにあたりを見まわした。
「先生は用があってあと数十分戻ってこないよ」
彼が話しかけてきた。彼の声は想像よりも低かった。彼の声は低いけどよく通る。僕はなんで返したらいいか分からず
「あっ、あー」
という情けない声を漏らした。少しの沈黙の後彼が口を開いた。
「全治2ヶ月、早く治って欲しかったけど、いざ治りそうになったら不安が押し寄せてくる。また以前みたいに楽しめるのか、怪我に怯えて集中できないかもしれない。どうしたらいいんだろうね」
独り言のように呟いていたが、僕にははっきり聞こえた。
20cm先の君へ ちょき 和 @t1107
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