第26話 各国の反応
「ほ、報告します!!」
数分後、この国の兵士の甲冑をきたウォルターが勢いよく扉を開けると、バカみたいなでかい声でそう言った。
「なんだ、騒がしい」
「ギルガキア、レテンテも我々同様、強襲を受けた模様です!」
皇帝っぽい見た目の人に臆することなく、ウォルターは声を張った。
「ふむ、こちらからは既に強襲された旨を送っているな? ……戦争、か。ちなみに、ギルガキアとレテンテは誰をやられた?」
「ギルガキアは皇太子殿下夫妻と、騎士団長殿を、レテンテ帝国は魔法師団長殿と宰相殿を失いました」
(同盟軍の仕業にしては統率が取れすぎている。こんなこと、我々協商軍でも不可能だ。……つまりは第三者、魔王軍の介入があったと考えるべきか。そう仮定した場合魔王はどちらに着くのか、それとも傍観を決め込むか。どちらにしろ、今の論点では埒が明かない。論点を変え、思考も切り替えなくては……)
◇
「ちっ、悪手だったか。あの皇帝、結構頭キレるぞ」
「いい考察してますね」
「あぁ。だが、ハイアットだけがいい考察をしていても意味が無い。ロウアットが狙い通り宣戦布告してくれれば、こいつらの考察も水の泡と化す」
「そこはもう、安心と安全のロウアットですね。彼らは絶対に宣戦布告してくれますよ」
結果から言えば、俺たちの狙い通り国で偉そうな人、リリアーヌ曰く「ガイムダイジンと、コクムダイジンを倒しました!」との事。ロウアットは高位の貴族たちを大臣として任命し、自分たちの仕事を明確にさせているらしい。
逆に、ハイアットなんかは、ことある事に有能な皇帝が、割り振りを決めるらしく、その者に合った仕事を与えるらしい。
とまぁ、そんなことは置いといて、リリアーヌはその要人の死体の近くに三国協商のマークを描いていたらしく、ロウアットは三国同盟と共に三国協商に宣戦布告した。
「我が国の要人を殺害した」という大義の元、宣戦を布告したのだが、もちろん協商側も皇太子夫妻の死、各国要人の死を大義に宣戦布告した。こっちに関しては予想外だが、全然ありな展開だ。
ありな展開だったのだが、大きな誤算が生まれてしまった。なんと、同盟側は勇者を戦場に送り込んできたのだ。異界の勇者ではなく、この世界の勇者。
ハイアットはスカルドラゴンの一件で、勇者の素質を持つ者を全て失ってしまったが、他国には複数の勇者がいるのが普通だ。多い国では二桁もいるところもある。
だが、国際協定には、戦争に於いて勇者の使用は禁ずると記載されたいる。勇者の動員は流石に予想外だ。協商側の残る二ヶ国は大義のために勇者は使わない意向を示している。
基本的にこの世界の戦いはにおいて重要なのは数。しかし、その数ですら圧倒的な個の前には太刀打ちできない。簡単に言えば、普通は数で勝負だが、圧倒的強者がいる場合に限り質が優先だ。
もちろん、指揮官の能力次第で戦況は大きく変わるが、圧倒的不利な状況下に置いても、頭抜けた個の力はバカには出来ないのだ。
「ちょっと困りますよね、こういうの」
「まぁ、勇者は消しといて損は無いだろ。我々魔族にも脅威になりうる存在だ」
「ですね。例のスカルドラゴンも勇者にやられたとか」
「あぁ。人の身であのような怪物を倒せるとは思えない。勇者には何か奥の手があると考えていい。警戒しておけ」
「はい」
◇
side:レテンテ帝国
「何!? ウィリアム殿下が!? ハイアットに至っては宰相殿と騎士団長殿まで……」
その日、レテンテ帝国では、魔法師団長と宰相が暗殺されたとこにより、緊急で会議を進めていた。
そんな中ギルガキアとハイアットからの訃報が相次いだのだ。
「陛下、これは同盟からの宣戦布告では無いでしょうか」
この会議に出席しているので偉いのだろうが、いかんせん若い、三十代程の男がそういう。
「そうであるな……。ハイアットは魔王軍に宣戦布告されたばかり。これを機にロウアットが戦争を仕掛けてもおかしくは無い……」
故にレテンテ帝国皇帝は疑問に思う。なぜ人族同士で戦争をするのか?
魔王という共通の敵がいて、なお、人族同士で戦争する理由がわからない。
幸いなことに、未だに魔王軍は動き出していない。それならば早急にこの戦争を終わらせ、魔王軍と戦う準備を進めるべきだろうか。
しかし、そうしようにも、協商側は戦争において、重要な戦力をいくつも削がれてしまった。
この妨害工作は同盟側では不可能……!ならば答えはひとつ。
「敵は魔王軍だ」
◇
side:ギルガキア皇国
「何!? ウィリアムがロウアットで暗殺された!? 戦争じゃあ!
ギルガキアの天皇、戦において負け知らずの脳筋騎士。我が子が殺されたと知り、戦争の準備を始めた。
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