第7話 四天王


「こやつらが我が魔王軍四天王だ」


「まずは竜王ジェイド」


「はっ」


 最初に紹介されたのは竜王と呼ばれた者。竜王とは言ったものの、竜人、トカゲ人間などがしっくり来る見た目だ。トカゲが二足歩行になった感じ。二又の槍を構えており、蒼い鱗が特徴的。蒼鱗騎士団と呼ばれる部下を持っており、蒼鱗騎士団とは別に第一師団のことらしい。ちなみに、他にも色んな色の竜人がいるんだとか。そんでもって、最初に紹介されたからには四天王筆頭と言ったところか。


「次に不死者王アンデッドキングリュシアン・ネクロ」


「……」


 無言で前に出てきたのは骸骨だ。王冠を被り、ボロボロのマントを羽織る骸骨。おそらくリッチだな。別の進化を辿っていれば俺もああなっていたのだろう。持っている杖からは凄まじい魔力を感じる。多分相当強い。でも勝てるビジョンは無数に浮かんでくる。


「巨人王ギガス」


「ハッ!!」


 十メートルほどある巨体から発せられるバカデカボイスで耳がキィンとなる。おそらくこいつのために入口の扉がでかいんだな。真っ赤な身体からは巨人も血は赤いんだなと感じさせる。全身から血管が浮かび上がり、その身体を隠すことなく晒している。もちろん下は履いているが。それでも装備すらしないということは身体が資本なのだろう。装備よりも身体の方が強いから不要だと言わんばかりの筋肉は全男の憧れだ。


「最後に、害悪王デック・ア・ルーブ」


「はい」


 最後に呼ばれたのはエルフ……いや、ダークエルフの女。害悪王なる異名からわかる通り多分搦手とかをら得意とする戦い方なのだろう。エルフの名に恥じぬ美人だ。灰色の長い髪は高い位置でひとつに束ねられており、切れ長の目から覗く赤い瞳には逆らう気すら無くす。まぁ美人に逆らうメリットは蔑むような目線くらいしか思い浮かばないので、逆らわないようにしよう。弓を持っているが、矢筒が見当たらない。おそらく魔法で矢を形成し、飛ばすのだろう。気が合いそうだ。


「こいつらはそれぞれ、竜人、アンデッド、巨人、ダークエルフの部下を持っている。それぞれが第一師団から第四師団までの団長だ。副官はそれぞれに二名づついるのだが……」


「彼は先の戦で死んでしてしまったので、新たな副官が欲しいですな。まぁ元々死んでいましたがね」


 そう発したのはリュシアンだ。要らぬブラックジョークを挟み、その場の空気が凍りつく。


「そうであったな。ではまずは第二師団、リュシアンの下で副官として邁進せよ。しかし、最初から副官と言うのもあれだ、他師団の副官の補佐として付くように。まぁ副官補佐だ」


「わかりました。じゃあ最初はジェイドさんのとこからでいいですか?」


「良いだろう。良いか?ジェイドよ」


「異論はございません。彼らに面倒を見るよう言っておきます」


「すまぬな。ではそれぞれの師団に2ヶ月づつ付くように」


「わかりました」


 どうやらキャリアコースらしい。四天王の副官とか美味しすぎるだろ。まずは副官補佐として頑張って、ゆくゆくは四天王にでもなりたいものだ。


「では行くとするかの」


 そう言って魔王が歩き始めた。え、どこにいくん?


「アトラナートさん、どこに行くんです?」


 近くに居たアトラナートに聞くことに。すると、困ったように「おそらく親睦会と称して中庭で宴かと……」との事。魔王は祭りが好きらしい。


「今は文句を言わずに着いていくのが得策ですよ」


 と、横からデック・ア・ルーブ……長いなルブさんでいいかな。まぁルブさんが教えてくれた。……何回もこの流れは経験してるんだな。なんか既に疲れた顔してるもん。魔王って絡み酒してくるんかなぁ。


「ありがとうルブさん」


「る、ルブさん!?」


 どうやら初めて呼ばれるようなニックネームらしく、酷く動揺していた。冷酷そうな見た目に反してあたふたしている様子は控えめに言って可愛すぎた。可愛い。


 と、そんなこんなで魔王の後ろを俺たち六人でぞろぞろと歩き、中庭までやってきた。


「な、なんじゃこりゃ……」


 中庭には、満開の桜の木が多数。花見かよ、とツッコミをしたくなったが、魔王と四天王たちはその場に座り込み酒を飲み始めている始末。


「はぁ、やはりこうなりましたか……」


「どんまいです、アトラナートさん」


 どうやらアトラナートさんは苦労人のようだ。



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