第4話 旅立ち

 ―――

 上級吸血鬼ヴァンパイアロード

 既に滅んだとされる種族。吸血鬼の完全上位互換。太陽の克服には至らないが、耐性を得た。生き物ならなんでも眷属にすることが可能。。ただし格上を眷属にするのは不可能。眷属には下級吸血鬼と吸血鬼が存在する。自分の相性のいい個体、吸血鬼になるのに相性のいい個体は吸血鬼として、その他は下級吸血鬼として眷属になる。

 ―――



 うーん、全体的に上がってはいるものの、LUC……運だよな、これは変わらずか。まぁ強くなれば運が良くなる訳でもないしな。とりあえずSTRとかはゲームと同じ感覚でいいのか? 教えてください、アナウンス? 様。


 ――

 STR

 ストレングス。物理攻撃時の威力に直結する。弓の威力に間接的に関わる。

 AGI

 アジリティ。素早さを表す。

 INT

 インテリジェンス。一般的に頭の良さではあるが、魔法威力に直結する。

 VIT

 バイタリティ。物理攻撃耐性を表す。VITの半分以下のSTRの攻撃は一切通用しない。飛び道具の判定もこちらに属する。

 RES

 レジスト。魔法攻撃耐性を表す。RESの半分以下のINTの攻撃は一切通用しない。

 DEX

 デクステリティ。器用さを表す。弓の威力威力、AIM標準合わせに関わる。

 LUC

 ラッキー。運を表す。生涯変化することの無い数字。平均値は50程度。

 ―――


 うん。だいたいわかった。わかったが、俺の運は平均の10倍。そりゃ死にかけの勇者パーティにドラゴンと遭遇するわな。最高すぎるだろ。


 次は脅威度というかランクについて知りたいな。教えてくだせぇ。


 ―――

 S:10000~

 A:5001~9999

 B:1000~5000

 C:501~999

 D:201~500

 E:91~200

 F:31~90

 G:1~30

 ―――


 この数値の他に頭に流れ込んできた情報について。

 この数字が表すのはLUKを除いたその他ステータスの平均値。その平均値が属するところが自分の脅威度らしい。これは人間にも適用されている。

 Gは五歳児くらい。Fは小学生くらい全てに当てはまるらしい。つまり六歳から十二歳の間が31~90くらいと考えるのが妥当だ。Eが中高生程度。まぁ91~200だし、ピンキリだろう。Dがこの世界の並、標準らしい。それでもDランク下位は地球で言う、まぁあ運動神経がいい人くらい。上位になると地球の人間じゃ太刀打ちできないらしい。Cランクは人族の中でもベテランと呼ばれるランク。自分を磨きあげ、レベルを上げるとCランクに至れるらしい。Bランクは1000~5000とピンキリではあるが化け物の部類に入る。Aランクに至っては人外の域なんだとか。それでも人族の中にAランクは百人前後存在するんだとか。最後にSランク。これは魔王とか勇者とかそのレベル。魔王の側近、勇者パーティ。俺はそこに既に至っている。


 と、ここで勇者という言葉が出てきたが、どうにもここにころがっている勇者がSランクの人間には見えない。そこで新しく得た情報では、そもそも勇者自体二種類いるということだ。


 ひとつは本来俺がなるはずであった異世界の勇者。もうひとつは国の王によって任命される現地の勇者。Sランクに至る勇者は前者。俺の目の前に転がっているのは後者。

 そんでもって魔王は一人しか存在しないらしい。そもそも魔族と人族で絶対数が違うらしいからな。そして魔王とか勇者の力関係だが、勇者を殺せるのは魔王のみ、魔王を殺せるのは勇者のみ。この場合の勇者は異世界の勇者のことを指す。


 つまり俺が女神への復讐のために勇者を殺しに行っても殺せないということだ。それならば俺がやることはひとつ。魔王に肩入れして勇者討伐の役に立つ。これに尽きる。


「そうと決まればまずはココから出なくてはいけないな。っと、これじゃ変態扱いだろ」


 自分の体を見下ろすと生まれたままの自分の体が目に映る。うん、ちゃんと男だ。肌は不健康な程に白いけど。

 この勇者から剥ぎ取って使うか? でも明らかにこいつのものじゃぶかぶかだろうな。

 勇者は筋肉質って感じで俺の体は貧弱って感じ。でも魔法でなんとかなるっぽいし……。


 ◇


 うんいい感じだな。


 氷の属性の魔法を使い鏡を作り出す。その氷に映るのは一人の美男子。黒い髪に赤のメッシュ。真っ赤な瞳に金の瞳孔。八重歯が生えており、明らかに悪そうな顔立ち。背中からは二枚一対のコウモリのような翼。


「ふふっ」


 少し笑ってみるも、なかなか上手く笑えていない。むしろ怖くなった。うん、良くないな。ポーカーフェイスで行こう。


 そして俺かま纏うのは燕尾服。ヴァンパイアと言ったら燕尾服じゃね? 違うかな。まぁそれを魔法で作った。燕尾服じゃなくても襟がたってるローブ的なの羽織るのもヴァンパイアっぽいよな。そして腰に下げているのは勇者が持っていた剣。結構な業物だし当分はこいつが俺の武器だ。他にい他パーティメンバーの衣服と装備は剥ぎ取って空間属性の魔法である異空間収納とやらにぶち込んでおいた。もちろん人間たちは燃やした。装備たちは魔王に雇ってもらうための手土産として持っていく予定なのだ。

 ちなみに、魔法に着いてなのだが、ヴァンパイアになったからか、本能的に扱えるっぽい。


「んじゃ、出発しゅっぱーつ


 ここがダンジョンであることは理解しているが、ボスベアであることから最下層であることが想定される。でも何回まであるのかかが分からないから要注意だ。

 さて、出口は……。転移の魔法陣もなければボス討伐後に入れるような扉もない。あるのは出入共有の扉ひとつ。あそこから出ればあとは上がるだけ。


「魔法は扱えるし、剣は多分身体能力ゴリ押しで行ける。迷ったら弓を作り出して狙撃だな。よし、行くぞ」


 ――ザザザザザザ


 そんな音でドアが開く。ココから俺のダンジョン逆走劇が始まるぜ!


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