第2話 サクッと
「ふむ。誰かと思えばただのスケルトン……いや、ユニーク個体か。まあ良い
喋った! ドラゴン喋った!
俺は驚愕していた。あいつどう見ても声帯ないじゃん! しかも俺に通じるような言語って日本語じゃん! とか思ったけどよく思い出せ日本語じゃなかった。多分異世界の言葉なのだろう。でもあのクソ女……多分女神だよな、そいつはそれ系のスキルとか祝福とかくれなかったし……。
『あやつめ、自分への態度がなっていないからと言うだけの理由で何も与えずに世界に落としよって。甘く育てすぎたかのぅ』
喋ったドラゴンに驚いていただけなのに次の瞬間にはまたまた知らない場所に来ていた。
え、また? この短時間で何回知らない場所を行き来すんねん。周りを見れば女神がいたところとは打って変わって質素……むしろ何も無い真っ白な空間が拡がっていた。床すら見えねぇよ。
「すまんの。あの世界に干渉したはいいものの連れてくるのはお主の魂が限度じゃったわ」
「魂? あ、俺のスケルトンボディがないなった!?」
愛着すら湧いてないスケルトンボディがなくなって小さい球体になっちまった。
「儂は一応世界神というものをやっている。あの女神はひとつの世界を管理しているのに対して儂は一応全ての世界を管理下に置いているのじゃ。とは言っても限度があるがの。時間もないので一方的に伝えるだけにするがお主が会った者はお主が生きていく世界の神じゃ。儂はその上司に当たるのじゃ。詫びと言っては何じゃが言語には不自由しないようにしたのと、お主を所謂ユニーク個体というものにした。進化の選択肢が増え、より強くなれる。頑張ってあの世界を生き抜いて欲しいのじゃ。儂からは以上じゃ。それじゃあ」
と、一方的に話されて、気づけばまたダンジョン。世界神とか言ってたな。世界とか神とか規模がデカすぎるな。社長と部長とか課長みたいなもんか? あるいは教育委員会のトップと校長とか一般教諭的な差がありそうだな。
まあとりあえずドラゴンさんに近寄れと言われたので行くしかない。
「お主は女神の使徒にして女神の祝福を受けられなかった不幸者と見えるが……」
「まぁたしかに不幸っちゃ不幸だな。今までいい感じに人生送れてたのにこんなにされちゃうなんて。でも俺は幸運体質らしくてな。あんたと会えたのも運が良かったからなのかもしれない」
「ククク。そうか。ではそこに倒れている人間……そうだな我に一番近い人間の手に握られている剣を取れ」
ふむ、見るからに剣と魔法の世界と言ったところか。俺と骨のドラゴンが喋れている時点でファンタジーだが。人間は四人。キラキラな装備に身を包んだ剣士に盾と剣を持ったタンクか? それと魔法使いらしいローブを着てそれらしいとんがり帽を被りそれらしい杖を持っている魔法使い。最後はシスター、だろうか。アニメとかでしか見たことないが、多分ヒーラーだろう。バランスの取れたいいパーティだが、もうちょっと尖ったパーティ構成でも良かったな。みんな息はあるらしい。
「おぉ、こりゃわざもんですなぁドラゴンさんや」
「あ、あぁ。急に変になるな。それよりその剣を使いその者らにトドメを刺すが良い」
「は? トドメ? なぜに」
「それがお前の為、ひいては我のためにもなる。さぁ殺れ!」
「ちっ、わかったよ。でもこの人達強そうだよ? 骨の俺で殺せんの?」
「我が出来ると言っている。殺れ」
まぁ見るからに人族だよな。これがあの女神への復讐の第一歩、人間殺し。いざ!
「うぅ」
――ザシュッ
まだ息があり呻き声を上げた剣士の頭に剣を突き刺す。
《レベルが上がりました》
《レベルが上がりまし―》
《レベルが上がりま―》
《レベルが――》
《Lvが10に到達しました。進化が可能です。進化しますか?》
は、はぁ? レベルアップ? 進化? わからんわからん。こいつ倒しただけで10までレベル上がったの?
「無事レベルアップが済んだか? 今は進化している場合ではない。全員にトドメを刺せ」
「わ、わかった。――うぉわぁ」
っとと。一気にレベルが上がったせいなのか軽くなった身体についていけずに一瞬体勢を崩してしまった。しかし、レベルアップとやらの恩恵は凄まじいな。とりあえず進化はしないでおこう。
――ザシュッ
――ザシュッ
―ザシュッ
「ふぅ。全員やったぞ。てかこの人達絶対美味しい経験値じゃん。進化とか言ってたし俺のレベル上限10ですよね? その分無駄になったり……」
「せん。経験値はレベルマックスになってもため続けることが可能だ。進化すればレベルの上限が上がり貯めて分の経験値を消費し、再びレベルアップを開始する」
「へぇ。レベルという概念がある世界か。面白いな。ではお邪魔しました。この部屋の外で進化させていただきますね。それじゃ」
「まぁ待て」
「な、なんですか? あんた強すぎて俺の本能が逃げろって言ってるんですよ。早く逃げさしてください」
「早く我にもトドメを刺さんか」
「……は?」
いやいや何口走ってるのこのドラゴン。自分殺せとかやばいでしょ。
「それがお前の為にもなるし、我の為にもなる。それよりももう魔力も尽きて回復も間に合わん。我にトドメをさして糧とせよ」
ふむ。こんなこと言ってるしサクッと行くか。
――サクッと、頭の骨を砕く。
「ふぅ。とても長い生であった。我が生きた証はお主の糧となって存在し続ける。人族に恨みでもあるのだろう? なにか目的があると見た。お主の野望が叶わんことを。世界一の不幸者……いや、幸運者」
最後にそう言ってスケルトンのドラゴンは粒子となって消えていった。
《ダンジョンマスターを討伐しました。ダンジョンマスターの権限が移ります》
さて、終わったし進化するかぁ。なんか聞こえた気がするけど、まぁ無視しておこう。ダンジョンマスターなんて面倒くさそうだし。
「進化ー」
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