寒空のスカートめくり(練習試合)
六畳のえる
そんな風に誘われたら
「あの……スカートめくり、しませんか?」
十二月五日、月曜日。今日付けで
「あ? いえ、う、お?」
あ行を全部使って戸惑いながら、俺の心臓は早くもハイテンポなメトロノームのように高速稼働を始める。スカートめくりって、スカートめくりって! アレだよね、男子の憧れのアレだよね!
改めて彼女をジッと見る。金色に近いほど明るい茶髪のミディアムヘア、綺麗にアイラインを引いた大きな目、小さい鼻にぷるぷるの唇。前の学校にここまでのレベルの子がいたか、というほど可愛い子だった。
「あ、急にごめんね。アタシ、一年四組の葛西
「その、葛西さん、一応確認だけど、スカートって、あのスカートだよね?」
「うん、このスカート」
そう言って彼女は、ミルクチョコレートを薄めたようなブラウンを基調にしたタータンチェックのブレザースカートをトンッと手で叩く。その仕草に俺の鼓動はまた跳ね上がった。
「そ、そそそそうなんだ」
そう返すのが精一杯だよ! だってそのスカートめくるんでしょ? アイドル並に可愛い目の前の相手のをめくっていいんでしょ! 興奮しない男子いないでしょ! どうしよう、幸運すぎてめくった瞬間に隕石とか落ちてきたりしないだろうか。スカートをとるか人類をとるか。まあスカートだろ。男子高校生なめんな。
「えっと、葛西さん、この場で……?」
「あ、ううん、さすがにこの場はちょっと。部室で……」
部室! さすが葛西さん、どこかの部活のマネージャーなんですかね! 他の部員がいない隙に部室で行われるスポーツマンシップを堂々と無視した行為。レッドカード? いやいや、俺の心もカードに負けないくらい赤く燃え
「じゃあ、ついてきてもらえるかな?」
「はい! ついていきます!」
もはやハチ公よりも忠犬になった俺は、彼女の三歩後ろを浮かれ気分で歩く。転校なんて大変なことばかりだと思ってたけど、こんな幸福が待ってるなんて、神様はやっぱり見てくれているんだな。
「あの、葛西さん」
渡り廊下を渡って南校舎へ移りながら声をかけると、彼女は振り返ってニッと歯を見せる。
「美純で良いわよ。名字呼ばれ慣れてないしね。私も奏太君って呼ぶから」
「ええっ!」
なんと、名前呼びでいいんですか! え、何これ。ひょっとしてこの子、俺のこと好き? そういうこと? 転校初日からパン
「で、どうしたの、奏太君?」
「あ、いや……美純は何で俺のこと誘ってくれたのかなって……」
「ああ、うん。君のことが欲しかったから、かな」
「ひゅあ……」
人間、本当に興奮したときは素っ頓狂な声すら出ないと俺は初めて知った。歯の隙間から間の抜けた音が漏れるだけだ。
「はい、ここです!」
彼女が指し示したのは、三階に上がってすぐの教室だった。
「ここでスカートめくりができるんですね、へへへ……」
「そうなの。奏太君、改めて、スカートめくり部へようこそ!」
「へへへ……へ?」
聞き間違いかと思うような単語の組み合わせに、俺は思わず首を傾げる。
「
「えっ、あの、ちょっ、美純……」
握手会の引き剥がしかと思うほど強い力で教室の中まで引っ張られる。中には黒とグレー、赤と黒、ネイビーとライトブルーなどさまざまな色のタータンチェックのスカートと「めくれ、俺達の未来を」という謎の習字が貼られていた。どういう格言なのこれ。
「おお、新人か!」
「今日転校してきた一年の子でしょ?」
教室にいた男子と女子がほぼ同時に立ち上がり、俺の方へ近づいてくる。そのタイミングで美純はピシャリとドアを閉めてガチャリと鍵をかけた。え、怖いんですけど。
「俺は二年でこのスカートめくり部の部長をしてる
「金見奏太です。よろしくお願いします……」
俺より七、八センチは高く、一八○近くありそうな來野さんは、細身だけどかなりがっしりしている。ワックスで固めた黒髪短髪、白い歯に爽やかな笑顔。スポーツマンとはこうだ、というイメージそのままの先輩だ。
ちょっと驚いたことと言えば、白のポロシャツの下に、赤と黒のタータンチェックのスカートを履いていたこと。そういうトランスジェンダーのようなテーマも中学のときに授業で聞いたし、女装を趣味にしている人も多いと聞くから、ここで見かけても不思議ではないだろう。
俺の視線を感じたのか、來野さんはスカートをパタパタと
「あ、このスカートか? これは部の正式なユニフォームだから着てるだけだぞ」
「ユニ、フォーム……?」
謎だらけの会話に妖怪首傾げかと思うほどほぼ直角に首を曲げる。ちなみにそんな名前の妖怪はいない。
まじまじと來野さんの服装を見ていると、隣にいた女子の先輩も握手を求めてきた。
「あたし、コーチの富永
何そのメダリストみたいな単語。初耳なんですけど。
「あと私はマネージャーね。よろしくね、奏太君」
俺をこの謎の部室へ連れてきた張本人、美純は、責任などどこ吹く風というトーンでアイドルスマイルを見せてくれている。
「よし、それじゃ奏太、早速練習に向かうぞ」
「いや、あの、スカートめくりは……」
何の説明もされないまま、俺は來野さんに抱きかかえられるようにして外に連れ出された。
「……あの、來野さん?」
「どうした、奏太」
「これは、なんでしょうか……?」
連れてこられた体育館は、館内とはいえ開け放した窓から木枯らしが吹きこんできて割と寒い。そんな体育館の入口から一番遠い端っこのスペース。バスケットコートの半分くらいのスペースに黄色いテープで枠が描かれたフィールドが用意されている。俺はそこで、來野さんと同じように上は白ポロシャツ、下はハーフパンツの上に赤と黒のタータンチェックのスカートを履かされていた。靴はもちろん体育館シューズだ。
「何って、我が校のスカートめくり部の公式ユニフォームってさっき言わなかったか?」
「いや、言いましたけど……すみません、そもそもスカートめくり部って……?」
なんだ説明してなかったのか、と來野さんが美純を見ると、彼女はバレたかとばかりに舌をペロッと出す。完全にナイショにしてたな……。
「いいか、このスカートめくり部は運動部の中でもかなりマイナーなスポーツだ」
「運動部なんですか!」
そんな気はしてたけど!
「そうだ、れっきとした競技なんだ。奏太、スカートめくりってのは小学校時代の男子の夢だろ?」
「まあ……うん、分からなくはないです」
やったことはないけどね。というか周りにもほとんどいなかった気がする。
「でも、実際に女子相手にやってはいけない。当たり前だよな? そこで、双方合意のもと、男子が男子の、あるいは女子が女子のスカートをめくれば問題ないだろう、という発想で生まれたのがこの競技だ。分かるか?」
「後半から急に分からなくなりました」
あんた真面目な顔で何言ってんだよ。
「いいか、奏太。誤解しないように言っておくが、これはあくまで『スカートの中を覗きたい』ではなく『スカートをめくってみたい』という夢を叶えるための競技だ。だからハーフパンツ着用は必須なんだぞ。もちろん女子スカートもハーフパンツ必須だ、うちには女子部はないけどな」
女子バレーみたいなノリで女子スカートめくり部を略さないでほしい。
「それに、ほら、奏太君。ちょっと歩いてみて。足のあたりスースーするでしょ?」
コーチの瑞希さんに指示されるまま、俺は数歩歩いてみる。確かにズボンでは感じない風を、股下から感じた。ハーフパンツがいつ見えても不思議じゃない。
「この状態で女子はいつも歩いてるの。常に見えそうなリスクと引き換えに、私達は青春を謳歌してるのよ。この競技を通して、女子のその大変さも理解してもらいたい。創始者は著書の中でそう述べているわ。分かった?」
「もう中盤から何言ってるか分かりませんでした」
著書って何? 三日で分かるスカートめくり?
「じゃあ早速ルールを説明していくぞ。バトルフィールドはこの黄色い枠線だ。ここの中では自由に動いていい。ダブルスの場合はちょっと狭いかもしれないけどな」
「ダブルスって……四人でやることがあるんですか?」
まさか! そのときには美純や瑞希さんも参加するのか!
「ああ、うちも部員は四人いるからな。残りの二人はスカートが破れたんで川合スポーツ用品店に買いに行ってる」
「ちゃんといるんですね……」
「全員二年生だから一年生は奏太だけだな。この部を背負って立つ男になると期待してるぞ!」
切れ長の目で涼しげな笑顔を見せ、パンッと肩を叩かれる。どうしよう、やってる競技のせいで全然爽やかに見えない。
「ちょっとライノ君、続き続き」
「ああ、そうだった」
瑞希さんに促され、來野さんはフィールドの真ん中に立ってスカートに手を当てた。
「競技自体は単純なんだ。相手のスカートをめくれば一点が入る。制限時間内にどっちが多くめくるか、そういう勝負だ。まあサッカーみたいなものだな」
「よくそこを引き合いに出せましたね」
全世界にプレイヤーがいるスポーツと並べられても。
「めくれないように自分のスカートを押さえるのは自由だ。機動力と攻撃力には乏しくなるが、守って戦うディフェンススタイルのときには有効だぞ」
きっちりルールが作り込まれてるのが逆にすごい。ちゃんとした競技になってるんだな。
「あとは……瑞希、何か補足あるか?」
「ライノ君、インプレの説明」
瑞希さんから謎の単語を聞き、來野さんは「あっ、そうか!」と手をポンッと打った。
「いいか、奏太。点を取るためとはいえ、スカートのことを無視して激しく動き回りすぎるとアーティスティック・インプレッション、つまり芸術点の減点を食らうことがある」
「芸術点あるんですか!」
「まあ単純に総得点から引かれるだけだけどな。何も気にせずハーフパンツ丸出しで地面を這いつくばるとか、スカート履いてるって状況をまるで無視してるのは良くないだろ?」
「まず地面を這いつくばる理由は何ですか」
体育館で何してるの? ねえ?
「あっ、
美純が体育館の入り口を指差す。身長差のある二人が、ポロシャツにスカート姿でやってきた。なんだろう、だんだん見慣れてきた自分が怖い。
ちょうどフィールドに到着したタイミングで、來野さんは自慢げに二人の肩を叩いた。
「うちの強力な二年生コンビだ。レオと竜、まさにタイガー&ドラゴンって感じだな!」
「レオならライオンでは」
なんか惜しいけど! 気持ちは分かるけど!
「君が期待の新人だね、よろしく。
黒い髪をツンツンに立てている童顔の玲生さんは背が低い。一六〇センチほどではないだろうか。
その隣にいた一八五はあろうかという茶髪の先輩は、少し低めの声で「
「これでダブルスができるな、來野」
「その通りだ、竜司。これからダブルスの練習試合をやるぞ。美純、ストップウォッチとスコアボード用意してくれ」
「はい!」
美純は体育館倉庫に駆けていく。來野さんに促され、俺も手伝いに行くことにした。
「ごめんね、奏太君。どうしても部員欲しくて、詳細明かさずに誘っちゃった。転校生だから部活のことも知らなかっただろうし」
「知ってたら断ったかもだしな……いや、まあ、謝らなくて大丈夫だよ」
キャスター付きのスコアボードを運びながら謝ってきた美純に、溜息混じりで首を振る。こんなアイドル級の子が話したこともない転校初日の俺のことを好きになるってのがまずおかしいわけで、俺の妄想が招いた不運な事故だったんだ……。
「でも、すごく楽しい競技だと思うから、頑張ってね」
「ん……」
たとえ君のスカートはめくれなくても、季節外れのヒマワリみたいな君の笑顔は本物で。そんな表情が見られるなら、試合でも何でもやってやろうという気になった。
「よし、俺と奏太、玲生と竜司ペアでやるぞ。まずは小手調べで、時間制じゃなくて点数制にしよう。三点先に取った方の勝ちだ。瑞希、美純、審判頼む」
「オッケーです!」
白と赤の旗と笛を持って、女子二人がフィールドに入る。これは何、ちゃんとめくれてるかどうかを審判が判断するの? 今更だけどどういう競技なの?
「位置について……」
瑞希さんのその掛け声で、フィールド上で二人ずつ相対した。俺の目の前では、背の低い玲生さんが不敵な笑みを浮かべている。
再び瑞希さんが「ようい……」と叫び、続くピーッという笛の音で試合がスタートした。
「
「分かって……ます……」
試合が始まってみて初めて分かる。これは難しい……っ!
いつめくられるか、と思うと自分のスカートを押さえてしまうのは当然。でもそうすると攻撃に転じられない。目の前で余裕を見せている玲生さんのスカートがすぐそこなのに、全く触れられずにいる。
そしてもう一つ、この競技は背が低い方が有利と気付かされる。腰をかがめてめくる以上、玲生さんのスカートに手をかけようとすると、必然腰が上がってしまい、格好の的だ。
防御しながらスカートを狙うことが如何に難しいか。この競技、奥が深いぞ!
「じゃあ、オレから行こうかな!」
そう言うが早いか、玲生さんはバッと駆け寄ってきて距離を詰める。ビビりながら左に避けると、彼は俺を狙うことなく、竜司さんと間合いを取っている來野さんの方に向きを変えた。
そうか、俺に向かってきたのはあくまでフェイク——
「奏太! 前だ!」
俺の思考を遮る、來野さんの雄叫び。何のことか瞬時には分からず、理解したときには全てが遅かった。
「がら空きだぜ」
俺に背を向けている玲生さんの左手が後ろに伸び、ひらりと俺のスカートをめくっていた。
「玲生・竜司ペア、一点!」
笛とともに赤い旗を上げて、美純が宣言する。俺達から視線を外さないまま、玲生さんと竜司さんはグーをぶつけあった。
「來野さん、今のって……」
俺の問いに、來野さんはフーッと短く息を吐いた。
「『バックハンド』、トリックプレイの一つだな。奏太、よく覚えておけ。スカートをめくるヤツが、常に前を向いているとは限らない」
「何の名言なんですかそれ」
雰囲気だけカッコいいのどうにかならないの。
「俺に任せろ、奏太。点を取り返してやる。技には力だ」
「えっ、タックルとかするんですか?」
「あのな、スカートを履いたらタックルなんて危険な行為はダメ。この業界の常識だぞ」
「業界とは」
ダメだ、ツッコミが追い付かない!
「奏太の借りは返すぜ、玲生!」
「ふふん、
そう言って、來野さんは猛スピードで走っていく。その勢いのまま玲生さんに突撃するかと思いきや、彼はギリギリとところでピタリと足を止める。そして、慣性の法則で前に傾く体を利用して、思いっきり腕を振り下ろした。
「うおおおああああっ!」
瞬間、一陣の風が吹く。その風は、逃げようと構えていた玲生さんのスカートをふわりと持ち上げた。
「うわっ!」
「お見事! 來野・奏太ペア、一点!」
白旗を掲げた瑞希さんが高らかに拍手し、続けて解説する。
「難度Bの技、『ブレーク・ウィンド』ね。めんこの要領で一気にめくりあげる。さすがライノ君だわ」
「よせやい、たまたまうまくいっただけだ」
いや、すごいんだけど、なんだろう……予想以上にすごすぎるというか……。
「それじゃあ今度はこっちの番だな。レオ、コンビいくぞ」
「任せといて!」
静かに呟いた竜司さんの後ろに、半円を描くようにして玲生さんが回り込む。そして、前後二人がピッタリ重なるような形で來野さんの方に迫っていった。なるほど、あれなら玲生さんがどこから攻めてくるか分からない。うまいこと考えたものだ。
そう思っていた自分が、甘かった。
「せいっ!」
突然竜司さんが立ち止まってグッと腰を落とす。そしてその背中を、玲生さんがトンッと軽やかに駆け上り、飛び上がった。
「え……」
ポカンと口を開けて、声を漏らしてしまった。玲生さんはそのまま、重力を脱ぎ捨てたかのように宙を舞い、足を動かして空中散歩した後、來野さんの反対側に着地する。
「クッ……!」
反射的に來野さんが玲生さんの方を振り向いたときだった。
「……それを待ってたよ」
「何っ!」
いつの間にか距離を詰めていた竜司さんが、來野さんのスカートをパサッとめくった。
「玲生・竜司ペア、一点!」
赤い旗を上げた瑞希さんが、あっけに取られている俺と美純に話しかける。
「コンビプレイの中でも大技、『リフトアップ・クロス』ね。あのまま玲生君がめくるのが普通なんだけど、しっかり反応してきたライノ君に、逆に竜司君がお見舞いする。恐ろしいコンビね、ホントに」
確かに。「玲生さんのジャンプ台」として機能していた竜司さんが攻撃してくるというのは、まさに盲点だった。
「さて、次は……奏太君だね」
獲物を狙うフクロウのように、竜司さんはギロッと鋭い目で、端っこでただ状況を見ているだけの俺を睨んだ。そしてグッと足に力を入れたかと思うと、勢いをつけて猛突進してくる。
うわっ、これは怖い!
「奏太、逃げろ! 俺がカバーに入る!」
來野さんの声が聞こえる。でも、カバーが間に合わないことは分かっていた。
とりあえず転げながら
「頑張って、奏太!」
美純の声だ。
まったく、俺をほぼ騙すような形で入部させておいて、よく言うぜ。
でも、それなら一つくらい良いところ見せなくちゃな。
「おおおおお!」
俺も竜司さんに向かうように走る。このまま行ったら正面衝突だ。
その、ギリギリのタイミングで、俺は思いっきり腰を
「うりゃああ!」
「何だとっ!」
竜司さんの両腕を
「奏太、めくれ!」
「いくぞおおおおおお!」
スカートに手を伸ばす。まだ竜司さんは振り返らない。よし、チャンスだ。
でも、ここで一つの疑問が浮かんだ。
あまりにも振り返るのが遅すぎないか?
その答えは、別の人が声で知らせてくれた。
「……発想は良かったよ、奏っち」
竜司さんの背後に俺、そしてその背後にいつの間にか玲生さんがいた。
パサッという音と共に、俺のハーフパンツが露わになる。
「玲生・竜司ペア、一点! 合計三点!」
長い笛の音が響き、俺の初めての試合は終了となった。
「いやあ、良かったよ、奏太君! まさか『ダイブ・イントゥ・ザ・グラウンド』をキメるとはね。初心者であれはなかなかできない!」
フィールドで横になっている俺を、瑞希さんが絶賛する。ダイブなんたらというのは技の名前らしいけど、この競技幾つ技があるんだろうか。
「奏太、良かったぞ。頼れる新人だ」
「あ、來野さん、ありがとうございます……」
玲生さんと竜司さんも、口々に褒めてくれる。
気になってちらりと美純を見ると、「良かったじゃん」と言わんばかりに、アイドルスマイルでピースサインをしてくれた。
「よし、奏太。ここから全力で練習していくぞ。来月には地区大会があるからな」
「大会があるんですか!」
「もちろんだ、関東大会の道は遠いからな」
そんなところまであるの? そもそも関東でやってる学校いくつあるの? 二回勝てば関東行けるとかないよね?
「どうだ、燃えてきただろ?」
來野さんが楽しそうに笑う。
変な競技に間違いないけど、面白いと思えたのも間違いないから。
「ですね、練習頑張ります!」
こうして、俺の一風変わった高校生活が始まったのだった。
めくるめく部活の日々、スカートだけにね。
〈了〉
寒空のスカートめくり(練習試合) 六畳のえる @rokujo_noel
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