3話目 ブリブリウンチ・プロジェクト①
「くらえっ、くらえっ!」ブリッブリッ
「スゴイです!Hey Bastards, EAT SHIT(クソ食らえ)!!!」
デブに担がれた俺は、襲いかかる999人の狂人にケツを向けてすごい速さでウンコをぶっ放す。
俺の名前は快便(かい・よすが)。
ただのタクシードライバーだった。昨日までは。
*
午前8時、大尻駅タクシー乗り場。
仮眠をとっていた俺は、スマホのアラーム音で飛び起きた。頭はスッキリしても体じゅう血の巡りが悪く、不快感に体をよじらせた。
シートを起こして外に出る。カラッとした快晴が空の端から端まで広がっている。なんて気持ちの良い朝なんだろう。あ、フンついとるやんけ。
寝てる間にフロントガラスにつけられた鳥のフンをこすっていると、駅構内からアナウンスがうっすら聞こえてきて、ほどなくして電車のブレーキ音が響いた。
「ハーイ!ドライバーさーん!」
階段を降りて散り散りになる制服姿の学生やら会社員の人混みの中、ディスカバリーチャンネルでしか見たことないタイプのすんごい太り方をしたバカデカい外国人がこちらに大きく身振り手振りで合図を送る。
観光客がこんな田舎の駅で降りるのは珍しいな。
こりゃどうやって車に押し込もうかなぁ。と考えながら、とりあえず手を振り返す。
その男メルは映画監督だった。
10年以上前、ノリと勢いで作った自主映画『ウンチ用のはらわた』が日本の配給会社の目に留まり、リリースを持ちかけられたのだという。
試しに安請け合いしてみたら想像以上に素敵なパッケージで発売され、"パケ詐欺" "中身はホームビデオレベル"と初めこそ酷評を受けるが、むしろその荒削り感はボンクラどものハートにびんびん火をつけてたちまちヒットした。
ソフトの売上、VOD、レンタル貸出、これらを全て合わせると結構な額面が振り込まれたので、その臨時収入を丸々製作費に充てて日米合作の新作を撮りに来たらしい。
新しい映画のタイトルはその名も『ブリブリウンチ・プロジェクト』…。意味は怖くて聞けなかった。
「立ち話が長くなりスミマセン!さ、You guys, Hurry up!」
たしか小学生くらいの時に駅のリニューアルを記念して作られた大きな尻のモニュメントの前で、金髪と黒髪のポニテ美女2人がいちゃいちゃとカメラでお互いを撮りあっていた。
ぴったりジャストサイズで着こなされたタイトな服装が体のラインを際立たせて、2人の体型の違いがよく分かる。金髪の方はガタイがよく出てるところがしっかり出ていて、黒髪の方は手脚が長くスレンダーなモデル体型。ああ、洋モノ、最高。
彼女らは俺たちには目もくれちゃいない。けしからん、せっかくなので目に焼き付けておこう。
…ってか演者この二人だけ?!
「そういえば、どこに行けばいいんですか?」
「Mt. Unchiの"ハイソン"です!」
4話に続く…💩
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます