第58話 終わらない勝負

 トイレに行ったナオキ。

 そのあいだに、ハジメは死神しにがみちゃんに聞く。聞くべきことを。

「結局、きみは何者なんだ?」

「えっ。べ、べつに、怪しい者じゃないですよ」

「バレバレじゃないの」

 マツは、やれやれといった様子で首を横に振っている。ロングヘアがさらさらと流れた。

「やっぱり」

「ダメなんです!」

「ん?」

 死神しにがみちゃんは、いつになく真剣しんけんだ。身体からだの前で両手をにぎり、ツインテールを揺らす。

「正体がばれると、こっちにいられなくなっちゃうんですよ!」

 ハジメの目が輝いた。逆に言えば、正体を知ってしまえば関わらなくてすむことになる。

「ほう」

「また、死神しにがみ余計よけいなことを――」

「なら、正体をあばけばいいってことだな。理解した」

 ハジメは嬉しそうだ。

師匠ししょうがうれしそうだと、わたしも。いやいや。ダメなものはダメなんですってば」

「そうね。それが賢明よね」

 そのとき、ナオキが帰ってきた。ドアの閉じる音がひびく。

「なんだ。オレがいないあいだに盛り上がってるじゃないか」

「そういうのじゃないですよ」

 ハジメは、まだよそよそしい。ナオキのことを名前で呼ぶようになっても、そこは徹底していた。

「そうよ。よにん揃ったところで、勝負しょうぶといきましょう」

「いいですね。おマツ。負けませんよ」

「オレは負けちゃうかもしれませんね!」

 ナオキもやる気だ。いや、別の意味で気合きあいが入っていた。

「だから、なんでそうなる」

 結局、死神しにがみちゃんを振り切れなかったハジメ。彼の受難じゅなんはつづくのであった。

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足音の静かな掃除屋 多田七究 @tada79

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