カーマンライン
維 黎
第1話
23世紀初頭、人類は絶望的な危機が迫りつつあることを知る。
事の始まりは西暦2204年6月。2週間の間に三つの隕石が地球に飛来した。
二つの隕石は大西洋と地中海の海上に落ちて人的被害はなかったが、三つ目の隕石がアジア連邦日本国に衝突。北海道南東の領海内に落ちた隕石の衝撃は、十勝平野と釧路平野の2/3を消失させた。
報告によれば小惑星が地球に衝突するまでおおよそ20年。しかしながらその小惑星は、
国際宇宙機構はその後も増え続けるであろう流星雨に対処すべく、宇宙空間作業用ロボットを改良した対流星雨人型有人兵器、通称‶
◇
イギリス宇宙軍所属の狙撃手中隊〝
【――
耳に心地よい声がヘルメット内のスピーカーから流れて耳朶を打つ。
過酷な宇宙空間での作業は神経をすり減らす。その為、パイロットの負担を少しでも軽減する為の措置が個人レベルで施されている。
「UⅢ2番機
オリヴァーが操縦する
訓練所出たての
【
「――UⅢ2番機、オリヴァー・アデア、出るぞッ!!」
人型のロボットが筒状の棒のような物――
オリヴァーが出撃した母艦から後続機が2機、同じように出撃する。
『――
オリヴァーの位置から右斜め下に地球があり、地球の向こう側から太陽の光に照らされる位置関係は黒のキャンバスに青白い光の弧を描く。
『暗闇を裂く光の弧線は希望を予感させるのよ』とは娘の言葉。
「――良いタイミングだ。お気に入りを録画してやれば喜ぶかな、アイツ」
そうつぶやくとオリヴァーは愛娘の為にとサブカメラの録画ボタンを押す。と、同時に機内に緊迫した声が響く。
『大量の隕石を感知したッ! くそッタレ!
流星群を予想した指令室は3個大隊、総勢180機の
漆黒の宇宙空間に色鮮やかな光が散りばめられ、時には美しい花火が広がることもあった。
その美しい花火が一つ上がるたびに命が一つ、消えていく。
(――アイツが生きる地球に一つたりとも落とすものかよッ!!)
どれほどの時間が過ぎ、いくつの隕石を撃ち落としたのか。
突然、機体が上下左右の位置関係が分からなくなるほど激しく揺れる。
機内が赤く点滅を繰り返し、どこの場所ともわからないほど
(――くそっ! 撃ち漏らしに当たったのか!?)
機体制御が全く出来ない苛立ちから、がむしゃらに操縦桿を動かしてみるが状況は変わらない――と、パチッという音が聞こえ、脇腹を思い切り殴られたような衝撃を受けたかと思うと意識が霞んでいくのを自覚する。
(――あ、録画を転……そ……う――)
そして新たな花火がまた一つ。
◇
「――さ、急いで地下のお家へいきましょうね」
母親だろう年若い女性が幼子の手を引いて歩く。
何やらアニメのキャラクターのTシャツと短パンという恰好から、おそらく男の子だろうその幼子は、夜空に何本も引かれた赤く燃える線を見て「きれぇー!」と無邪気に手を伸ばした。
――了――
カーマンライン 維 黎 @yuirei
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