第10話
姉達は、私を溺愛していた。
否、お人形のように可愛がってくれていた。
可愛がってくれていたので、彼氏が出来たことも喜んでくれていた。
だからこの日の事も喜んでくれるはず。
そう思って碧を初めて家に招待いした。
碧は緊張して
「こんな服装でいいか?」
とか身なりをしきりに気にしていたり、お土産を気にしていたり見た目と違う一面を見せていて私はそんな碧を笑っていた。
家に着いて、姉達に紹介するとやっぱり歓迎ムードになって和やかに話は進んでいた。
この時までは。
「…で、怖かったけどちゃんと碧と出来たんだよ。」
この後、姉達は当然「良かったね!」とか「幸せになってね!」と言う言葉を投げかけてくれるんだと思っていた。
でも返ってきたのは沈黙だった。
「ふーん。そんなに良かったんだ。」
「え?」
思いもよらない言葉が返ってきた。
「この子の男性恐怖症は筋金入りでしょ?
普通のテクニックの男じゃ絶対に治せないのよ。」
「…え?」
「あなた、碧って言ったけ?
この子の男性恐怖症治せるか私たちが試してあげる。
だって普通の気持ち良さじゃダメだもの。」
そうやって碧は姉2人に奥の部屋に連れて行かれた。
何が起こっているのかわからない。
碧がこっちに向かって何か言っている。
でも体が動かない。
ただ、頭の中で
(ああ、もう私がしなくてもいいんだ)
安心していた。
後に碧から聞いた話で分かったこと。
実は姉達も従兄弟から同じ目に遭っていた。
ただ一つ違うのは、姉達は悦んでいたということ。
自分から進んで従兄弟の元に行っていたけれど、従兄弟はいつも私を選んでいた。
だから当時は2人とも私が妬ましくて、湯船に沈められる私を見て笑っていたと言うこと。
そして。
母と叔父は関係を持っていて。
そしてこの家は狂っていた。
水と脂 たゆらう @Tayurau
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