第4話

〜"再会"からの"別れ"〜


冬休みに入り私の体調は

少しずつ回復していきました。

家から出るのにも慣れてきて

人と話すことにも慣れてきました。


三学期に入り、もうこの学校に行かなくて

済むと思うとなんだか全てどうでも良くなり

思い切って学校に行ってみました。

だけど教室にはまだ行きたくなかったので

保健室登校。

先生は状況が状況なので保健室でも

登校してくれればいいと言ってくれました。


ある日誰も生徒がいない時間、

保健室で先生が出してくれたお茶を

飲みながら会話をしていると一人の生徒が入ってきました。

その生徒は私が好きで好きで仕方のなかった彼でした。

彼は私を見た瞬間に、駆け寄ってきて

心配してくれたことを一番に

伝えてくれました。

その言葉を聞いた瞬間

嬉しさと虚しさと申し訳なさで

涙が溢れ出しました。

どのぐらい泣いていたか覚えていないけど

目がナメクジになるまで泣いていた。


私が泣き止んで少し経つと

彼は色んな事を聞いてきました。

でも、全部には答えられなかった。


私が保健室登校してると知ってからは

彼も毎日保健室登校になりました。

帰りは毎日家まで送ってくれて

うちに来ては他愛もない話をしたり

一緒にテレビ見たりと

付き合っていた頃より

2人で過ごす時間が増えました。

お互いに付き合おうとは言わず

"ただ居心地のいいこの時間と場所"

が凄く必要でお互いに大切にしたいんだと思う。


私は彼とまた話すことが出来ただけで嬉しかったし

もう"彼氏彼女"の関係じゃなくても

いいと思えた。


だって、一緒にいられるだけで充分だったから。


だけど海外への移住計画は着々と進み

彼とお別れまで1ヶ月を切りました。


彼には海外へ行く事は

伝えてありませんでした。


そんなある日彼が突然

『海外行っちゃうの?』と

今までに見たことのない真剣な顔で

聞いてきました。


どこからそんな噂を聞いたのかと思うと

どうやら3年生になり、クラス替えの名簿に

どこを探しても私の名前がなかった事と

私の机が完全になくなっている事に

変だなと思っていたそうで

そんな事を思っているとどこからか風の噂で

私が海外へ行くという話が飛んできたみたい。


世間って狭いからいくか隠していても

漏れてしまうものですよね。


嘘をついてもしょうがないと思い私は


『来月から行くよ』


と、伝えました。


彼はただ


『そっか』


とだけ言って、いつも通りの彼に戻りました。


彼との時間が楽しかった分

移住への時間が近づく度に辛くなりました。


でももう同じ事を繰り返したくないので

私の決意は揺らぎませんでした。


海外へ行く2週間前、

ご飯を食べながら何気なくTwitterを見ていると

彼ととある女子が付き合ってるみたいな

ツイートが目に入った。

私はこれを見た瞬間、"あのいじめ"が

フラッシュバックして食べていたご飯を

全部吐き出してしまいました。

そしてまた体調が悪化してしまい

家から出れなくなってしまいました。

海外へ行くまでに治さないといけないのに

その焦りからなのか症状は悪化する一方。


そんな時、保健室にも行けなくなって

連絡すらも返さなくなった私を心配して

彼が家に訪ねてきました。


インターホンに映る彼を見て

会いたい気持ちが溢れ出して

玄関を開けようとした。

その時頭に過ったのは過去のトラウマだった。

"もうあんな経験をしたくない"という

気持ちが勝ってしまい、

お母さんにお願いして


『いません』


と伝えてもらいました。

それを聞いた彼は

少し寂しそうな顔をして


『わかりました』


とだけ残し、家を去りました。


あの時の彼の顔は今でも忘れられません。


これを最後に彼に会う事は無く

私は海外へと移住しました。


今思えば、あの時ちゃんと話していれば

何かが変わっていたのかななんて思ってる自分がいる。


だけど"過去"になってしまったら

後悔してももう手遅れなんだよね。

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"生きる事"への葛藤を、原動力に。 亜崋亜(AquA) @sakurachan39

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