【最終話】人として大切な事

 結論から言うと…海野茜は死んでいない。


 僕は教室を出た後、保健室に向かい養護教諭に海野茜が教室で倒れている事を伝えた。それを聞いた養護教諭は急いで教室に走っていった。彼女は救急車によって病院に運ばれ、一命をとりとめたらしい。


 …僕は海野茜の事が嫌いだ。自分を犯罪者扱いした女を好きになれるはずがない。だから彼女がどうなろうと、どうでもいい。


 でも彼女は葵さんの従妹なのだ。彼女が死ぬと葵さんが悲しむ。もちろん彼女は表面上は平気な風を装うだろうけど、内心ではとても悲しんでいるはずだ。


 大事な彼女を悲しませるのは彼氏のする事ではない。それに僕は2度と葵さんの涙を見たくなかった。彼女の悲しそうな表情を想像するだけでも胸が締め付けられる。彼女には笑っていて欲しい。


 だから最低限の義務だけを果たす事にした。先生に報告だけすれば十分だろう。


 海野茜は今回の「自分が死にそうになっているのに、周りの人が誰も助けてくれなかった」というのが完全にトラウマになったようで「外に出たくない…」と現在自宅に引きこもっているのだと言う。


 …海野茜がこのような事になったのは、彼女自身の酷すぎる言動が招いた結果に他ならない。


 自分を助けてくれた人を罵倒し、あまつさえ犯罪者扱いした女の末路は…自分が本当に苦しんでいるにもかかわらず、誰にも助けられずに野垂れ死ぬ寸前まで行った。


 これほどまでに「自業自得」という言葉が似合う女もいないだろう。


 助けて貰ってお礼をしないぐらいならまだいい。こちらもそれが目的で助けた訳ではないし。 


 しかし恩を仇で返すような仕打ちをする者を助けようとする人など存在しない。 


 …残念な事に最近は日本でも個人主義が浸透した影響か、長年続く不景気により人々の心に余裕がなくなったからか、人に良くしてもらったにもかかわらず、自分の気に入らない事があるとすぐに騒ぎ出す人がいるのも確かだ。


 海野茜ほど極端なのはめったにいないと思うが。


 …ここで少し考えてみて欲しい。


 そのような人間の主張がはびこる世の中になるとどうなるか?


 特に近年はネットの発達でこのようなニュースが出回るスピードが早く、多くの人間が目にするところとなる。


 その結果…ある人が本当に困って助けを望んでいたとしても、それを助ける人が誰もいない冷たい世の中になってしまうだろう。


 「この人を助けたら自分は文句を言われるかもしれない、訴えられるかもしれない」


 その可能性が少しあるだけでも、人は他人を助けるのを躊躇してしまうものなのだ。


 人は誰しも1人では生きていけない。これはその人が例えどんなに可愛くても、イケメンでも、頭が良くても、スポーツができても、健康でも一緒である。


 どんな人間にも自分の不得手な分野はあるし、1人だけの力ではどうしようもない事もある。自分に落ち度が無くても突然の不幸に見舞われる時だってあるだろう。


 故に僕たちはお互いに助け合いながら生きて行かなければならない。それが社会性を持つ人間という生物だと僕は思っている。


 だからこそ僕は…。



○○〇



「生人君、出ましたよ」


「了解!」


 現在、僕は葵さんと一緒に高校近くのゲーセンで例のゾンビシューティングゲームをプレイしていた。彼女がもう1度僕と協力プレイしたいと言い出したのだ。


 彼女の腕前は初回プレイ時よりかなり上がっている。僕でも唸るようなプレイを見せる時がたまにあるのだ。…これは気を引き締めないといつか彼女に抜かれてしまうかもしれない。


「あっ…」


 そんな事を考えていると、敵が僕の目の前までやって来ていた。ヤバい、今はゲームに集中しないと。


「任せて下さい!」


 しかし葵さんが僕の目の前まで来た敵を倒してくれた。


「フッフーン! 私もゲームの達人である生人君をフォローできるぐらいまで成長したんですよ♪」


 彼女はドヤ顔でそんな事を言ってくる。僕はそんな彼女を愛おしく思った。


「ありがとう葵さん、助かったよ!」


「どういたしまして。あっ、次のステージが始まりますよ!」


 だからこそ僕は…自分を助けてくれた人には声を大きくしてこう言いたい。


!』と。




『命を助けたはずの女の子に罵倒され断罪された僕は人生に絶望する でもそんな僕の善行をちゃんと評価してくれた人に救われました その人と付き合えて今は幸せです 一方僕を絶望に突き落とした彼女は…』


~完~




◇◇◇



はい、本編はここまでとなります。ここまでお付き合い頂き、誠にありがとうございました。


面白かった。ヒロインが可愛い! と思ってくださった方は☆での評価をお願いします。


私も完璧な人間ではありませんので、この作品もガバい所や甘い所があったと思います。自分としても結構反省点がありました。


反省するべき点は次回作に生かしますので次の作品も見て下さるとうれしいです。


では、また会う日まで

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【完結済】命を助けたはずの女の子に罵倒され断罪された僕は人生に絶望する でもそんな僕の善行をちゃんと評価してくれた人に救われました その人と付き合えて今は幸せです 一方僕を絶望に突き落とした彼女は… 栗坊 @aiueoabcde

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