第4話 数年越しの結論は?
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それから六年経った今。俺は同アパートに暮らしている(職業は予備校講師兼オカルトサイトのフリーライターをしているがホラー小説家になりたいと思っている)。予備校から帰宅したばかりの深夜0時、習慣のように点けたTVで、人間と野生動物の距離が近づいていることを問題視するニュースが流れている。
司会とコメンテーターが「もともと野生動物がいた場所に街を築いた上に、街には世界中から食糧が集められており、野生動物にとって食糧庫のようなもの。残飯を目当てにする野生動物は意外と多い」とやり取りしつつ、公園の雑木林に住んでいる狐を赤外線望遠レンズで撮った映像が流れている。狐は、盗んで来た残飯?いや、買ったばかりのようにも見えるおにぎりであるが、食事をしている。
その映像を見つつ、大学時代に遭遇したマネキンの怪奇現象を思い出す。怪奇現象翌日にアパートを掃除した時に見つけた茶色の毛と狐、消えた一万円と狐が食べている買ったばかりのようなおにぎり…。
そう思っていると、日本に古くから有る「狐や狸に化かされる話」が頭を巡る。教訓的な話も有ったと思うが、そんな話とともに当時の俺を思い出すに、ナンパという見知らぬ女性に希望を抱いていた俺って、化かしやすかったかもしれない。そう言えば、当時の俺は油揚げにもはまっていたな。もし本当なら、社会的にも奇妙な現金紛失事件等が増えるかもしれない?いや、浮かれた者の戒めになって良いかも?
想像も広がりが止むと、ふっと笑ってしまう。コズミックホラー作家を目指すの俺の性なのかもしれないが、ロマンチストに過ぎる想像だ。頭を振って作業机兼食事テーブルに着いて、ビニール袋からビール缶と刺身の盛り合わせとかき揚げを取り出した。
以上「あの超常的な昔話は事実か?【短編小説】」。
あの超常的な昔話は事実か?【純文学・短編】 柿倉あずま @KAKIKURA
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