第19話 最終話 最後の戦いは、リバース合戦だ★ZO❤

 他のパーティに、ムリはさせられない。

 オレが犠牲になるしかなかろう。

  

「ジュライ王子! お一人ではムチャです!」


「オレがやらねば、やつは倒せない。魔王! オレの美声に酔★い★な」


 意を決して、オレは言霊を発する。


『火の精霊ちゃん、おはー★ おじさんは足腰の限界を超えて、魔王を倒しに来ちゃったZO❤ でも、キミの協力が必要なんDA★ 手を貸してくれないKA??????』


 炎のドラゴンを、オレは喚び出した。


 ドラゴンは、部屋を埋め尽くさんばかりにデカい。

 

 対する魔王の方も、悪意を持った言霊を仕掛けてくる。


『あらら~。ご無沙汰しちゃったるじゃ~ん❤ 氷の精霊SA◆MA♣ 今日もイケメンだWA◇ 勇者一向に、JI★GO❤KUを見せてやってくれな~い?????』


 氷でできた大蛇が、オレのドラゴンに絡みつく。


 ドラゴンはヘビを引きちぎろうとして、もがいた。

 ヘビの方も、ドラゴンの首をしめにかかる。


「負けるな!」


 オレはドラゴンの頭に乗って、さらに魔法を繰り出した。


「返り討ちにしてやる!」


 魔王の方も、ヘビの頭へと移動して、反撃してくる。


 互いの魔法が、激しくぶつかり合った。


 そのときである。

 

「うげええええええええ!」


 オレは、猛烈にリバースした。

 

「そんな! ジュライ王子の方が、吐くなんて!?」


 なんて、魔力だ。

 言霊の力負けをするとは。

 

「オロロロロロロロロロロ~!」


 魔王の方も、キラキラをマーライオンのように吐き出す。

 しかし、まだ余裕があるようだ。


「やるわね。でも、ここまでのようね! いくらチートを手に入れたからと言って、しょせん生身のザコ! 魔王の力を取り込んだあたしには、勝てないのよ!」


「それは、どうっスかね?」


 魔王の脇から、声がした。

 

「なにい? ぐへええ!」

 

 ヘビの横っ面を、巨大なガイコツの手が払う。


 大蛇の頭部が、ガイコツによって破壊される。


 魔王が、地面に叩きつけられた。


「何事!? スケルトンだと!?」


 魔王が見上げた先には、大型のスケルトンが立っている。


 スケルトンの方に乗っているのは、フゥヤだ。

 

「たしかに、あなたは強いっス。しかし、しょせんは一人っス。対する我々は、ジュライ王子の言霊によって、不純物を取り除いてもらったっス。魔力の使い方が最適化できるようになり、ここまで強くなったっスよ」

 

 スケルトンのアッパーが、魔王をとらえる。


「があああああ!」


 巨大な拳を浴びて、魔王が吹っ飛んでいく。



「今です、勇者! チチェロさん!」


 フゥヤが、チチェロ父娘に呼びかけた。


「おう! いくぞチチェロ!」


「はい、父上!」


 チチェロと勇者が、同じ構えを取る。



「アァァァクセル!」


「トラストォォォォ!」


 風属性魔法を全開まで乗せた突きを、二人は同時に繰り出した。


 空中にいる魔王に、聖なる剣が刺さる。


「こんなことくらいで、あたしは死なないんだよ!」


 魔王はまだ、執念で再生しようとした。


「ダメだね。再生は、させないZO」


 オレはドラゴンの頭に乗ったまま、魔王へと近づく。


「来るな!」


 ボロボロの状態で、魔王がもがいた。

 

 魔王の耳に、ワイヤレススピーカーを投げ飛ばす。



『魔王よ★ よい子は、おねんねの時間だZO☆』



「あべええええええええええええええ!」

 

 

 どす黒いキラキラを吐き出して、魔王は消滅した。



 暗雲が消えて、陽の光が魔王の城を照らす。

 太陽の光を浴びて、魔王城が砂へと変わっていった。

 汚染されていた土壌も、すっかり元通りに。


「勝ったようだな」


 魔王は、逝ったか。


 自分の欲望のまま生きていたら、オレもあんなふうに


「ジュライ王子、ありがとうございます」


「オレは、なにもしていないよ。勝ったのはキミだ。勇者よ」


 チチェロがいたから、オレは正気を保てていたんだな。


 オレ一人では、あの魔王に絶対に勝てなかった。


 魔王とオレとの違いは、たった一つ。


 仲間がいるか、いなかったか。

 それだけ。



――あれから、数ヶ月が過ぎた。


 オレとチチェロは、新居でくつろいでいる。


 ウェディングドレスのチチェロが、父親といっしょにヴァージンロードを歩いてきたときは、感動だった。


「あのときもキレイだったけど、今もキレイだ。チチェロ」


「ありがとうございます」


 チチェロが、オレの横に座った。

 

「王子、ありがとうございます。王子のお陰で、父とヴァージンロードを歩けました。


「いいな。大事な人が近くにいるってのは」

 

 大切な人がそばにいるってのは、何物にも代え難い。


「チチェロがいたから、オレはずっとまともでいられたんだ」


「王子。わたしも、王子がいたから今日までがんばってこられました。王子が励ましてくれなければ、父が生きていると確信が持てず、闇に落ちていたでしょう」


「オレもチチェロがいなければ、魔王と同じ過ちを犯していただろうな」


 チートを持っていても、道を踏み外すことだってある。

 我欲にまみれて性根が腐っていたら、魔王になってしまうんだ。


「これからは、ずっといっしょだZO☆ 共に幸せをつかもうNE❤」


 オレは、チチェロにウインクをした。


「うっぷ!」



 突然、チチェロが口を抑えて外へ駆け出す。



「あ~。まだオレの【おじさん構文】は有効だったか」



「いえ。そうではなく」

 

 チチェロは、はにかんだ。


(おしまい❤)

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イケメン王子に転生したけど、常時発動スキル【おじさん構文】でヒロイン全員リバースしたZO☆ でも悪い気を取り除くだけだから安心だね❤ 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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