第18話 「暴走vs暴走」

 マナトが振りかざした木刀は、イカ魚人の脳天に入る。めり込み、魚人の顔は変形しだし、目が飛び出そうになる。


 口からは唾液が飛び、脳にダメージが入った為、吐き気を催し手で口を抑えていた。


 「う、うぅ...おぇ...」

 口から墨汁がドボドボと垂れ落ちる。イカ魚人の足元には大きな黒い水たまりができる。


 「うわ...」

 今まで見たことのない光景を目の当たりにして、マナトは後ずさりしてしまう。


 「てめぇ...」

 口周りについている墨汁を手で拭いながら、イカ魚人はマナトの顔を睨みつけた。


 「よくも、よくも俺を...」

 白かった体は徐々に赤身を増し、顔周りにある触手が逆立ちする。


 「こいつ、どんだけ頑丈なんだよ...」

 

 「許さん...」

 魚人の触手が徐々に大きくなっていく。


 膨張していく触手は次第に、本体であるイカ魚人の体を埋め尽くしていった。


 「やばいぞ、これ」


 マナトは絶望する。目のまえには巨大化して全長15メートルほどになった触手が、うじゃうじゃと居てうねっている。


 触手で埋もれた魚人の雄叫びと共に、触手が暴れ出した。見境もなく、建物や地面、看板など次々とぶつかり破壊していった。


 マナト達は逃げようとするも、既に大きなダメージを追っていたため、逃げ切ることができず、触手の攻撃を食らってしまう。


 "ボキボキ"

 マナトは完全に右腕の骨が折れた音を聞いた。


 「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!」


 (痛い、痛い、痛い、痛すぎる)

 転生前にも後にも受けたことの痛みで、マナトは大声で叫んだ。


 カミヤは右腕、左脚の2つを骨折してしまった。だが、運よく追撃には当たらず、大きなゴミ置き場の台車の下に隠れることができた。


 (ごめんなさい、マナトさん)

 (今の僕には何もできない...)


 既に負傷していたカミヤはスキル『創生』が使えることも、走って助けに行くこともできないので、ただ見ることしかできなかった。

 

 痛がるマナトには更なる追撃が入る。右斜め方向から物凄い勢いで飛んできた触手で、横にある壁に吹き飛ばされた。


 その衝撃によって、あばら骨を数本痛めてしまった。もう声に出して痛がる余裕もなかった。


 (けど、諦めない!)

 心の奥底で光る闘志の灯は、消えてはいなかった。


 (久しぶりに友達ができた、信頼された。一緒に居たいと思ってくれる人がいた。)


 「俺は、あいつらとまだ一緒に旅がしたんだ」

 「よく知らんイカ魚人にやられてたまるかよ」


 マナトは仁王立ちし、全身に力を入れ始めた。左腕には力が入っていたが、右腕はだらーんと垂れていた。


 「すまん、カミヤ」

 「あれ使う」

 マナトの瞳孔の色が緑色と変わる。全身に緑の血を感じる。


 「だめです、それを使ったら誰が止めるんですか」

 カミヤは精一杯声を大にして、マナトに呼びかける。しかし、マナトにこの声は届くことはなかった。


 「だああぁぁぁぁぁあ!」

 「ゴブリンズハイだあぁぁ!!」


 マナトのスピードと力が格段に上昇した。普段の10倍以上の力を発揮できる状況になったのだ。しかし、ゴブリンズハイは、驚異的な力と引き換えに理性が利かなくなるという博打行為。


 マナトは高速移動で落ちていた木刀を拾い上げ、次々と大きな触手を切り落としていった。


 「す、すごい...」

 あまりの異次元の強さにカミヤは開いた口が塞がらなかった。


 「今、右腕を負傷しているから、片腕だけの威力でこんなにもあるのか」


 マナトは触手を全て切り落とし、本体を切り込みにかかった。イカ魚人も最後の力を振り絞って拳で対抗する。


 決着は一瞬でついた。マナトが押し勝ち、イカ魚人の顔面にぶつける。魚人は白目をむき泡を吐いて気絶した。


 勝負はついたが、マナトは止まらない。壁に向かって木刀を振りかざしたり、地面を思いっきり殴ったりして暴れている。


 「もう終わりました!止まってください!」

 カミヤはゴミ台車の下から、ほふく前進で出てきた。


 カミヤの声は虚しくもマナトには届かない。それどころか、マナトは殺意をもってカミヤに近づいてきたのだった。


 左手で木刀を握りながら、カミヤに振りかざそうとする。ゴブリンズハイの状態なので行動が物凄く早く、カミヤは一瞬状況を読み込めなかった。


 それに、気づけても、カミヤは右腕と左脚を骨折しているので、走って逃げることなんか出来なかった。どうすることも出来なかったのだ。


 「マナトさん。戻って...」



 


 

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中学からぼっち生活を送る俺が転生し、孤独な仲間たちと出会う。11歳の子供たちが手を取り合い、様々な島を巡る冒険で真の友情を築く。ゴブリンとのハーフとして最強スキルを手に入れ、陽キャを目指す壮大な物語 オカモト歩惰 @okamoto_san_

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