第17話 「触手地獄」

 イカ魚人の触手がカミヤの方に伸びる、伸びる、伸びる...


 ”あと1cm”


 カミヤは覚悟を決め、目を瞑り、触手攻撃を受ける態勢を取っていた。


 「させねぇーーー!!」

 触手よりも先にカミヤに触れたのは、マナトの緑色のやけど痕のある手だった。


 マナトの脚は、一目で分かるぐらい血管がうじゃうじゃと浮き出ていた。また、息を切らしていた。


 イカ魚人は瞬時に状況を判断し、伸ばした触手を縮こませた。そして、左側にあった別の触手で、鞭にように攻撃をしかけてきた。


 マナトはカミヤを抱え、ステップで後に下がってかわした。


 だが...


 「ふっ、甘いんだよ」

 マナト達がかわしたはずの触手は、クイックターンでまた攻撃をしかけてきたのだった。


 鞭のようにしなっている触手がマナトの腹に入る。マナトは血反吐を少し吐きながら飛ばされ、また壁にぶつかった。


 カミヤはマナトが庇ってくれたおかげで、攻撃をモロには食らわず、地面に倒れ込む程度で済んだ。


 しかし、”イカ”は容赦しない

 

 「お前ら本当の闘いを知らないだろぉ」

 「ヤクザを5年やってる俺に勝てる訳ないんだよぉ、カッカッ」


 魚人は顔周りにある8本の触手を同時に鞭のように動かし始めた。そして、マナトとカミヤに追い打ちをかける。


 触手は地面や壁に擦れ、煙が立ちこむ。威力はすさまじく、触れたところにはひび割れを起こしている。


 「カーッーーーーーーーー!!」

 10秒ほどの攻撃し、抵抗を感じなかったため、イカの魚人は触手を止めた。


 煙をだんだんと晴れていき、マナト達の姿があらわになってきた。


 「は??」

 その姿を見て、イカの魚人は大きく口を開け、驚いていた。


 マナトもカミヤもボロボロになっていたものの、意識を失ってはいなかったのだ。


 「へへへ」

 カミヤは強がりの笑いをしながら、”ゴムのマント”払いのけた。


 「僕たちだって、サメにだって盗人にも戦ったんだ...」

 そうセリフを吐くが、体には至る所に切り傷があった。


 カミヤにとって、攻撃を受ける間の短時間で作れて、かつ、耐えれるものを『創生』しなければいけなかった。


 辛うじて命を守ることはできたが、もう長くは戦えるコンディションではなかった。


 「おいおい、それで終わり?」

 壁の瓦礫を適当に投げながら、立っているマナト。


 しかし、カミヤ同様、意識は失う寸前であった。腕部分のみに血液循環の回転数を早くさせ、筋肉硬化を行って、攻撃に耐えていたのである。


 「もう飽きた、終わらせるぞ...カミヤ!!」

 全身の血液循環の回転数を上げ、目をかっぴらく。全身に血管が浮き出ている。


 「ハイ!」

 両手の手のひらを合わせ、次の『創生』の準備を始める。


 「そうはさせねぇよ!!」

 イカの魚人もようやく気付いた。先に利便性の高いスキルを持っているカミヤから仕留めるべきだと。


 しかし、それはもう遅かった。


 マナトはカミヤの前に立ち、8本の触手攻撃を全て防ぎ返した。


 鞭のような触手攻撃は終わらない。マナトにふさがれても、ふさがれても、すぐに折り返して、しなりのある攻撃をしてくる。


 だが、マナトもそのスピードと威力に対抗した。全身高回転血液循環を行っているマナトの体は鉄のように丈夫になっていた。


 また、血液の循環が早い為、触手の素早い攻撃にもついていけた。


「カミ...ヤ...はやく...」

攻撃を1本も残らず塞ぎながら、マナトは頼み込む。最後のラストピースを...


「もう...できま...す!」

丁度その時完成した。カミヤの手には木刀があった。全長90cmで、剣先は鋭く、鉄剣に負けを劣らないほどであった。


 「ないす」

 右手で素早く木刀を受け取り、一気に触手を切り落とした。


 「くそおぉぉぉぉぉーーー!!」

 イカの魚人は、切られた触手を手で抱え込みながら叫んだ。


 「終わりだあぁぁ!」

 相手に悲しむ隙を与えず、最後のとどめをしかけにいく。


 木刀を両手で持ち、大きく飛び跳ね、”イカ”に向かって振りかざした。



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