いるはずのないあいつ

根本雨音

プロローグ

「君の顔が見たかったな。

 神様は本当に残酷だよね。

 どうでもいい奴の顔ばかり見せやがって。」


私は荷物を落として立ち尽くした。

聞こえないはずのあいつの声が延々と耳に入ってくる。

4年前、電話越しに聞いた掠れるようなか細い声。

嫌な記憶が蘇る。思い出したくもない、私を蝕み続ける嫌な記憶。


やはり、この街に戻ってくるのは、まだ早すぎたのか。


抜け出すことのできない回廊のようなトラウマよ、


「なぜ私をこんなにも苦しめる。」

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いるはずのないあいつ 根本雨音 @amane_0120

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