第43話 エピローグ
王都を目指す1ヶ月の長旅は、アウルムちゃんとドルチェという可愛いモフモフたちのおかげで、それはもう、楽しい旅となった。
この長旅で、更に仲良しになったわたしたちは、もうすぐ王都に着こうとしている。
馬車の車窓からは、王都に向かう多くの馬車が見えていた。さすが王都、行商人や旅行客、様々な目的であの大きな都市を目指しているのだろう。
「おっきいのです……」
「わふわふ!王都についたら美味しいご飯が食べたいぞ!」
「そうねぇ」
わたしは、2人の横に並んで、馬車の中から王都を眺めた。
前方に見える王都は、ホールケーキを3段重ねたような形をしており、上にいくにつれて、少しずつ小さい円になっている。
上段2段からは、数箇所、滝のように水が流れて落ちていて、水が豊かな土地だということがわかる。あそこから流れてくる水は、馬車の横を流れる川に繋がっているのだろうか。
もう一度、王都を見る。ホールケーキの1番上には、ロウソクでも立てるように、細長いお城が立っているのが見えた。きっとあれが王城なのだろう。
アウルムちゃんの目的である〈宮廷魔導士さんに会って魔道具について話を聞く〉を実現するためには、あの王城に向かえばいいはずだ。
「新しい町ってワクワクするわね」
「はいなのです!アウルムは王都でも魔法のすごさをみんなに広めるのです!」
「わふわふ!ドルチェは!ドルチェは!んー……ご飯!」
「そうねぇ、わたしも魔法を広めたいし、ご飯も食べたいわ♪」
2人の頭を撫でながら答えた。
そして、わたしにはもう一つ、目標があった。
――王都でこそ、ちゃんとお金持ちになりたい。――
これである。
今まで、マーレルでもベルルクでも、億万長者になりかけて、なり損ねてきた。だから、今度こそ、王都でこそ、前世の知識を総動員して、お金持ちになりたい。
密かにそう考えていた。
そんなわたしの考えとリンクするように、
「さぁ!皆さん!王都でしっかりと稼ぎますわよ!そして!お父様のディアマン商会の名を世に知らしめますの!」
「はい!ピアお嬢様!」
「わたしのことはリュピアお嬢様と呼びなさい!」
「うふふ、ピアお嬢様はピアお嬢様ですよ」
隣の馬車からの声だった。ディアマン商会と言っているし、荷馬車はすごく大きい。たぶん、王都に商品を売りにきた行商人なのだろう。
そちらの馬車を見る。すると、御者をしているのは、ピアお嬢様と呼ばれた少女、いや、幼女だった。
白くて黒のラインが入ったふわふわな丸いお耳、お尻にも同じ模様のもふもふの細長い尻尾が生えていた。
猫の亜人だろうか?ううん、あの模様はホワイトタイガーかしら?
その子は、お嬢様と呼ばれるだけあって、白くて長い髪の毛を一部編み込んでまとめていた。Theお嬢様、という髪型だ。上品な雰囲気をまとっていた。
ちょっと吊り上がった目は強気な雰囲気で、〈ですわ〉という口調に、ドレスのような服装からも、いいとこ育ちなのが伺える。
とっても可愛い……もふもふしたいわ……
「フランお姉さん?」
「わふ?ご主人様?」
わたしの邪念を見抜くように、天使たちが顔を覗き込んでいた。いけないいけない。
「え?ああ!なんでもないのよ!王都のご飯楽しみねー!」
わたしは誤魔化すように前を見る。
そう、もう一つ、王都での目標があったのを思い出した。
もっともっと!もふもふたちと触れ合いたい!
そして!お金持ちになって!憧れのスローライフを手に入れるのよ!
そんな欲にまみれた考えを浮かべながら、わたしは王都の門をくぐるのであった。
チー投資~前世の知識でお金持ち目指したらモフモフに囲まれて幸せになりました~ 真心 糸 @magocoro_ito
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