僕の好きな女の子は、いつも誰かの事を考えながらひとりため息をついている。

神石水亞宮類

第1話 僕の好きな女の子は、いつも誰かの事を考えながらひとりため息をついている。




“僕の好きな女の子は、いつも誰かの事を考えながらひとり

ため息をついている。”


僕は仕事に行く途中でよく寄るファーストフードのお店で30分、

ゆっくり本を読みながら寛げる時間。

同じファーストフード店に同じ時間ぐらい、僕がちょうどオーダーを

取ってテーブルにつく頃、お店に彼女が入って来る。

僕は頼んだハンバーガーとコーヒーを飲みながら、片手に本を持って

目で文字を追っていた。

彼女もだいたい窓側の席に座り、彼の事を想って深いため息

を一度ついた後、コーヒーを飲んでまたため息。

一体? どんな男性を想って彼女はため息をついているのか?



・・・彼女とは、朝このお店でしか会わない!

“そんな彼女に僕は恋をした。”

他の男性を好きな彼女に恋をするなんて、“変態”みたいな

話なのだと想うのだけど?

“恋をしている女性はとても魅力的で、そんな他の男性に恋

している彼女を僕は好きなのだろう。”

なんか面倒くさいけど。

ただただ遠くから彼女を僕は見ているだけ!

どうにもならない“恋”でもしないよりはマシだな。






 *





・・・そんな毎日の日常が、“今日は少し違っていた!”

そう、彼女が僕の知らない男と一緒にお店に入って来たからだ!



『ねえ、何食べる?』

『“キミと同じモノでいいよ。”』

『マフィンとコーヒーでいい?』

『うん。』



今日の彼女はなんだかいつもと違って、ウキウキしている!

“きっと、この男性が彼女のため息をつく男なのだろう。”

いつも見ない彼女の笑顔はまた特別で、その笑顔は全て彼に向けられている。

この時僕は、“失恋したんだと想った。”

僕の胸がスキュンとうずいたからだ!

チクチク痛くて、まるで誰かが僕の心臓を針で何度も刺しているみたいだった。

彼女と男性の会話も何もかも見たくないくせに、僕は見るのをやめられない!

二人に釘付けに僕はなっていた事を後で気づくほど、僕は彼女と男性に釘付け

だったんだ。

二人の会話を全部知りたい!

静かに耳を澄ませて、二人の会話に集中して......。



『また一緒に来ようね。』

『うん。』



・・・最後の二人の会話は、こうやって終わりお店を二人揃って出て行った。

なんなんだろうな? この気持ち!

いつまでも僕は彼女の事を好きでいられると信じ込んでいた。

でも? あんな風に見せつけられたら? “僕の彼女への恋を終わらせないと

いけないんじゃないかと真剣に想うようになる!”



なにもかも“初めて見る彼女の表情に僕は凍りつく!”

彼女の横に居た男性に向けられた表情はどれもこれも僕は初めてで。

“あんな顔やあんな表情も彼女はするんだな” と少し寂しくもあったんだ。

やっぱり見てるだけじゃ何も始まらない!




 *




あれから今でも朝、いつものお店で彼女と会う事はあったが、

彼女がため息をついているところを僕はもう見なくなった。

全て順調に彼と上手くいってるのだろう。

いつも通り、彼女はマフィンとコーヒーを飲みながら窓から

外の風景を見ていた。

そして時間になると? そのまま会社へ向かう。



まあ、“僕の幸せは彼女がいつも笑顔であばそれでいい!”

例え、彼女の相手が僕じゃなくても......。

何気ない僕の日常に彼女がいつも居てくれれば、今の僕はそれだけで

幸せなのかもしれない。

ふと、そんな事を想う日もあった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の好きな女の子は、いつも誰かの事を考えながらひとりため息をついている。 神石水亞宮類 @kamiisimizu-aguru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ