第四章 攻撃

 塔の中での生活は、一見平和で何不自由ないように思えた。

 しかし、ある夜、突然の警報音と衝撃音によって、その平穏は破られた。

 ハルカはベッドから飛び起き、心臓の鼓動を感じながら、何が起こったのかを理解しようとした。


「攻撃を感知。攻撃を感知。緊急対応措置を発動。」

マザーの声はいつも通り冷静だったが、その声には何かが欠けているように感じた。ハルカは、マザーに何が起きたのか尋ねたが、返ってきた答えは曖昧で彼女の不安を増すばかりだった。


「マザー!一体何があったの?攻撃ってどういうこと?」

ハルカの声は震えていた。


「…心配は入りません、ハルカ。」

マザーの声は相変わらず冷静だったが、その言葉はハルカにとって何の慰めにもならなかった。


 さらなる衝撃音と振動が塔を揺さぶり、ハルカは恐怖で固まった。

彼女は、この塔がただの避難所ではなく、何かもっと大きな目的のために建てられたことを感じ取っていた。そして、今夜の出来事が、その真実に近づく手がかりになるかもしれないと直感した。


「攻撃を受けているは、攻撃を加えている誰かがいるということ。」


 マザーは人類は滅びたと言っていた。それが真実であれば今攻撃しているのは人間以外の存在ということ。

もし、嘘であれば人は滅んでいないということだ。


 どちらにしても、この世界にはハルカ以外に何者かが存在していることになる。ハルカはそう結論つけた。


 不意に警報音が止み、静寂が訪れた。だが、嫌な予感は減らずにさらに増した。その予感を追認する様に、マザーの声が塔に響く。


「更なる攻撃を感知。システムに致命的な損傷の可能性大。」


 その刹那、塔の周囲に凄まじい雷光の如ききらめきが纏う。はるかの視界は白い光に包まれた。


 そして、光が消えた後、薄れゆく意識の中でハルカは自分が塔の中にいないことに気づいた。

彼女の足元には荒れ果てた大地が広がり、空は灰色の雲に覆われていた。遠くには破壊された建物の残骸が見え、生命の気配はなかった。

しかし、彼女は一人ではなかった。目の前には、機械のような姿をした生き物が立っていた。その生き物は、ハルカに向かってゆっくりと手を伸ばし、言葉を発した。


「こんにちは。マザー。」


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白き塔の守り人と少女ハルカの物語 せいじぃ @Seiji_55

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