第三章 雲海の塔と少女ハルカ

雲に覆われた天上にそびえ立つ白い塔。その塔の中で、ハルカは目を覚ます。彼女の耳には、マザーと呼ばれる声だけの存在からの優しい言葉が響いていた。「おはよう、ハルカ。今日も一日、学びましょう。」


塔の周囲には、三つの円形状の建造物が取り付いている。これらの建造物は、学習施設、生活施設、そして農園施設として機能しており、それぞれが広大な空間を有し、塔の中心に向かって伸びる通路は、これらの施設を塔本体に接続していた。


学習施設には、ハルカの教育のための教室があった。

壁一面には視覚的インターフェースが備えられ、マザーが提供する知識を学ぶことができた。また、研究室には実験器具が揃えられ、実験を通じて科学の原理を理解することができる。書籍が収められている図書館もあり、ハルカはここで読書を楽しみながら知識を深めていた。


生活施設は、ハルカの日常生活を支えている。

ハルカの好みに合わせた食事を提供してくれる食堂。寝室は快適な睡眠を促すために調光可能な窓や温度調節機能を備えている。リビングスペースには、リラックスできる家具や調度品が用意され、ハルカが休息を取る場所となっている。


農園施設では、様々な植物が栽培され、塔内での食料自給自足を可能にしている。また、この施設は、ハルカにとって自然と触れ合うことができる貴重な場所となっていた。


塔の先端にある円錐状の構造物は、観測室として機能している。ここからは、雲海の上を見渡すことができ、星々の観察も可能でありハルカのお気に入りの場所であった。


これらの施設は、確かにハルカ一人で使用するには巨大で過剰すぎるように思えた。かつては多くの人々が生活し、学び、働いていたのかもしれない。

ハルカが一人でいる理由、そして塔が建てられた理由は分からないが、何らかの目的を持って作られたのは間違いない。


「私はあなたを守るためにここにいるの。あなたが安全で、知識を身につけ、成長できるようにね。」


マザーの言葉が脳裏に浮かぶ。


「私はなぜ一人でここにいるのだろう。」

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