第7話 ダックス一人旅 仙台ー東京
東京での学生時代に初めて買ったのがギア付きのダックスである。当時13万円ほどだったと思う。燃費が50kmと維持費が安いのが何よりだった。これでアルバイト先と大学に通っていて、重宝していた。
夏休みと秋休みに仙台の実家に帰る際に、もっとも安く帰る方法は、ダックスだった。学生だから時間はいっぱいあるが、お金はない。夜行列車で帰ると8時間近くかかり、4000円ぐらいかかったと思う。ダックスなら12時間でなんと1000円で帰ることができるのである。
今回紹介するのは、4回目となる東京への戻り旅である。
朝6時に仙台の実家を出発。天候はくもり。予報は雨である。仙台市内は旧4号を走る。早朝なので、交通量は多くないが制限速度が違うので追い抜くクルマが多い。原チャリのつらさである。交通量が多いバイパスを避けて岩沼まで行く。そこからは6号線に入る。片側1車線となり、4号線と比べれば交通量が少ない。車線も広いのでクルマもスムーズに抜いていく。
8時に、最初の給油と休憩をとる。場所は南相馬である。燃費はいいが、タンクは小さい。航続距離は短く、100kmほどしか走れない。あたたかいドリンクを飲んで、また走り出す。6号線はなんの変哲もない直線路である。景色は海が見えるわけではなく、田園地帯を走る農道の拡大版みたいな道路だ。追い越していくクルマも少ない。
10鬨30分にいわき市に入る。また給油と休憩である。しばらくぶりの市街地だ。信号で停まることが多い。頭の上がだんだんあやしくなってきた。いわきを越えて小名浜あたりから海が見え始める。天気は悪くなりつつあるが、景色は気持ちいい。
12時に道路脇のレストランに入り、スパゲティを食べる。ゆったり休む。ダックスのシートは疲れにくいのだが、同じ姿勢をずっと続けるのはやはり疲れる。店から出ると軽い運動をする。
13時、またもやスタート。茨城県に入ると交通量が多くなる。なるべく道路の左端を走るようにした。
15時、水戸到着。3回目の給油を行う。このあたりから雨が降ってきた。4回目にして初めての雨である。用意していた雨カッパを着込む。より慎重な運転を心がける。道路のわだちを走ると雨水がたまっているので、その左脇を走る。それが災いとなった。後輪がパンクしてしまったのだ。パンク修理キットは持っていなかった。そこからダックスを押して歩く。軽いバイクなのに、パンクしているタイヤでは重く感じる。途中のガソリンスタンドでは、
「バイクのパンクの修理はできない」
と断られ、バイク屋さんか整備工場をさがすことになってしまった。
17時30分、土浦で整備工場を見つけた。2時間近くダックスをおしてへとへとだ。雨カッパは用をなしていない。雨は防いでも汗だくだくだ。気持ち悪いの一言に尽きる。
18時、再スタート。最後の給油をして、東京都内をめざす。
20時半。世田谷のアパートに到着。無事ではなかったが、何とかたどりついた。着替えて、即銭湯に行ったのは言うまでもない。心身ともに疲労困憊だったが、銭湯は気持ちいい。仙台の銭湯は私が小さい時になくなったので、銭湯というと東京のイメージだ。ただ、遅くいくと地元体育大学生が部活後に来るので、湯が汚れている。一番風呂はたまらなく幸せだった。
今回のツーリングデータ
スタート時間 6時
到着時間 20時半
走行距離 360km
消費燃料 7L
※過去3回の走行時間は、いずれも12時間である。
※このダックスとの付き合いは1年で終わった。大学3年の時に軽自動車のホンダZを購入したからである。いいバイクだったが、原チャリの速度制限ではクルマの波にのれないのは、やはり厳しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます