第3話 TLM一人旅 神嶺(しんれい)林道

 一時、トライアルバイクに凝っていた時期があり、TLM220に乗っていた。タンクが小さいので、ツーリングには向かないが近くの林道や河原でトライアルもどきをやっていた。

 今回は蔵王町と白石市を結ぶ神嶺林道にチャレンジ。全ルート砂利道および沢越えの道である。

 蔵王町にあるえぼしスキー場に行く途中の左手に林道に入る道がある。一応、通行禁止の看板があるが、「ごめんなさい」を言って、通らせてもらう。林業の方々の道なのでじゃまをしてはいけない。ただ、三度通ったが、一度も車両とすれ違ったことはない。ただし、一度は泥んこ道で途中で引き返してきた。自己責任で通る分には黙認されているらしい。最初は白石からの下り道を通ったが、今回は蔵王町からの登り道である。蔵王側は標高600m、白石側は標高820m、標高差220mのルートである。

 景色は森の中を走るので、けっして良くはない。出だしは、泥んこ道になりかねない土の道が続く。細かいカーブがあり、スピードコントロールは大事だ。ところどころ藪が道に張り出している。基本はトラック道で、クルマ1台分の幅があるのだが、クルマの通行に支障がない藪は刈られていない。だが、バイカーにはつらい。それに大きな岩が転がっているところもある。気をつけて走らないと衝突の危険性もある。かつて、整備されていない二口(ふたくち)峠を走っていた時に、カーブを抜けた途端に道ががけ崩れでなかったことがある。くれぐれも安全運転である。

(二口峠ではバイクを下りて、山側に残った30cmほどの道を押して抜けた)

 コースの3分の1ほどを走ると、このコース最大のハイライト、沢渡りである。オフロードの人たちは「洗い越し」と呼んでいるとのこと。秋山沢という川の砂防施設の堰の上を走ることになる。コンクリート部分と砂利部分があり、水の流れもあるので、ゆっくり走るとハンドルをとられやすい。ある程度のスピードを出した方が抜ける。距離は50mほど。ハンドルをとられて滑ると、川に流され、小さな崖を下ることになる。水量が多い時もあるので、その際はあきらめてUターンすることをすすめる。

 渡る前に、ここから蔵王の姿を見てほしい。天気が良ければ眼前にせまってくる。と言っても、蔵王という山はない。連峰の名前が蔵王であり、神嶺林道から見える山は不忘山・屏風ケ岳、水引入道、そして烏帽子岳(前・後)である。屏風ケ岳は壁みたいに見える。宮城側から見える名峰である。

 沢渡りを越えると、一気に登りの道となる。砂利道なのでハンドルをとられないように、しっかりと握る。まさに林道のだいご味である。そこを抜けると、また右・左のカーブが続く。

 しばらく行くと、十字路がある。左に行くと国設のキャンプ場に出る。このあたりは登山道にもなっているので、要注意である。人にも注意だが、熊や猪にも気をつけなければならない。近くの別の林道であるが、前方に子熊が走っているのを見たことがある。子熊の近くには親熊がいるので、すぐさまUターンしたことがある。子熊は逃げるが親熊はクルマでもおそってくる。バイクならひとたまりもない。子を守る母は強しである。

 白萩山林道への分かれ道にでた。進行方向は直進。白萩山林道は3kmほどの短い道だが、登り一辺倒の道である。道は荒れているので気をつける必要がある。私はカーブの多い道が好きなので、神嶺林道を進む。

 このあたりからは、あまり高低差を感じない。交通量も多いらしく、左右にわだちができている。中央の凸部にのると滑りやすいが、わだちを走るとハンドルをとられやすいので、気をつけて走る。樹々に囲まれた道はある意味森林浴である。ゆっくり走れば気持ちはいいが、油断するとハンドルをとられることになる。

 そして、急に視界が広がる。白石スキー場の下に到着。神嶺林道走破である。スキー場のレストハウスのレストランの開店時間にはまだ早いので、県道51号を通って、遠刈田温泉までもどろうと思う。そこまで行けば、おいしいカレーや手打ちそばが食べられる。それに日帰り温泉の露天風呂で蔵王をながめるのも一興である。

 今回のツーリングデータ

  スタート時間 9時30分

  到着時間  10時15分

  走行距離   9km

  消費燃料   0.5L(推定)

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