第2話 REBEL一人旅 阿蘇

 今回はレンタルバイク旅である。飛行機で福岡まで行き、そこから九州新幹線で熊本に行く。そこのビジネスホテルに入る。ヘルメット持参で旅をしていると人の視線を感じる。もっともむき出しではないので、バイクを知らない人は丸いバッグとしか思わないようだ。

 翌日、9時過ぎレンタルバイク店に出向く。対応してくれた女性スタッフの心遣いがうれしい。

「立ちごけでも警察に届けをお願いします」

 の一言には面くらったが、それがレンタルバイクの宿命なのかもしれない。それでも足つきのいいREBEL250が今回の相棒である。よほどのことがないかぎり、立ちごけはない。

 走り出しは慎重に走る。ギヤ付きに乗るのは2年ぶりである。チェンジペダルが比較的前にあるので何か違和感がある。アメリカンタイプの特性かもしれない。阿蘇に入るまでは広い道が続く。交通量も多い。慎重に慎重を重ねる。

 高速のインターを過ぎたあたりで、片側一車線の道になった。交通量も少なくなった。以前に車で来た時に走ったことがあるので、だいたいの道はわかっている。だが、熊本地震復興のための新しい道路ができている。快適だが、単調な道はつまらない。

 道の駅で休憩。3月初めで春がきているはずだが、今日は寒い。朝の熊本は8度だった。阿蘇に登ってくると気温は下がっている。そこから大観峰(標高935m)をめざす。坂道のカーブを曲がるたびに風が強くなる。体が冷えてきたし、お腹もすいてきた。途中のドライブインで休憩することにした。と、ここでヒヤッとする。駐車場が斜めなので、危うくバイクを倒しそうになった。何とかもちこたえて、両足またぎで場所を変えた。風が強く、駐車場所を考えないと転倒しそうだった。そこで風よけになる看板の脇に停めた。

 店に入ると、時間が早いせいか、客は私一人だった。店の人も開店準備の途中だったみたいだ。2階の展望レストランに席をとり、「ゆず塩ラーメン」を注文。トイレに行き、阿蘇の展望を堪能していると、マイクロバスが到着して団体客が入ってきた。鹿児島の高校生だった。どうやら部活の遠征の帰りのようだ。店の中がとたんににぎやかになった。団体客の前に注文を終えていて助かった。でてきた「ゆず塩ラーメン」は結構いける味だった。熊本といえば豚骨ラーメンだが、正直どろっとしたラーメンは苦手である。

 その後、外輪山の尾根道を大観峰をめざす。風がビュービュー音をたてている。バイクを斜めにしないと走れないぐらいの風だ。下手をすると反対車線に押し出されそうになる。平日なので車が少なくて助かった。

 大観峰(標高935m)に到着。見晴らしは最高。阿蘇の山々、噴煙もばっちり見える。ただ、風が強い。バイクを停めるところは土手の陰なので、倒れる心配は少ないが、歩くのでさえつらい。早々に下山することにした。

 気持ちのいいカーブの下り道、以前にクルマで走った道をたどる。(また来ることができた)という思いが強くなった。下に降りると風は弱まった。山に囲まれた盆地ゆえである。そして、またまた道の駅で休憩。体は冷えているが、返却時間までにはまだ時間がある。そこで、前々から行ってみたいと思っていた草千里ケ浜へ行くことにした。阿蘇パノラマラインで20分ほどの距離だ。ここは10年に一度、ライダーたちがアルバム撮影のために集結する場所である。前回は2019年。次回は2029年。今年はその中間にあたる。自分一人で写真を撮って記念とすることにした。あと5年後、来られるかどうか、来てみたいとは思うが未来は分からない。

 そして、パノラマラインから左に抜ける道にはいり、米塚という山の脇を走る。草原の中にこんもりと山がそびえている。いかにも阿蘇らしい景色だが、風が強い。バイクを停めると倒れそうな感じがするので、停止はあきらめた。

 途中のペンション村にしゃれたカフェがあったので、そこにバイクを停めた。だいぶ下にきたので風は弱まっている。ドイツ風の木組みの外観で、感じがいい。中に入ると、ドイツのローテンブルグにあるおもちゃ屋さんの雰囲気そのままだ。お客は一人、パソコンで何か入力している。おそらく旅のメモをしている感じだ。どうやら台湾人だ。熊本に台湾の半導体メーカーが進出してきたので、台湾人が増えているようだ。

 店の人に

「ドイツに住んでいたんですか?」

 と聞くと、

「いえ、ドイツが好きでよく旅に行くんです」

 という返事だった。私はかつて隣国ベルギーに駐在員でいたので、3回ローテンブルグを訪れている。妻のお気に入りの町である。

 カフェオレを注文する。すると、ふつうの倍の大きさのカップででてきた。びっくりすると店の人は笑っていた。おいしかったし、体もあったまった。

 店の人と何気ない会話をして、またバイクにまたがる。市街地道路に入るが、渋滞を避けて脇道へ入る。ナビの指示どおりだが、本当に行けるかどうか少し心配になった。でも、交通量は少ない。そこをのんびり走ると熊本市内のメインストリートにでた。来る時に通った道だ。レンタルバイク店の近くのガソリンスタンドで給油。無事故で予定より1時間早く返却。風との戦いのツーリングだったが、念願の阿蘇ツーリング。満喫できた。

 今回のツーリングデータ。

  スタート時間  9時30分

  到着時間   17時

  走行距離    133km

  消費燃料    5L

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