第2話 出会い
ハロルドと彼との出会いは三年前まで遡る。
アルターナ、名前だけの村にやってくる人は滅多にいない。数年に一回来る行商人ぐらいなものだ。
小さな村に男がやってきたという情報は村中一気に広まった。
それでも見た目の詳細がわからないせいなのか仮面を被っているせいなのか皆不気味がって誰も近づかなかった。さらに言えば彼も誰とも関わらず山の上の小さな古屋に根を張ったのも一因だろうか。
ただ、幼いハロルドだけは違った。毎日同じことの繰り返し。家の手伝いをやり畑仕事を手伝い飯を食って寝るだけのつまらない日常。心底つまらない。
何か、なんでもいいから刺激が欲しかったのだ。
外からやってきた彼にこそこそ近づいてそこで、見たのだ。
『すごい。』
流星のような綺麗な剣さばき。足の運びはまるで舞を見ているかのように優雅で動から静まで無駄が一切ない。素人目でもわかるすごさだったのだ。
ハロルドは一瞬で憧れた。これだ。僕はこれが欲しかったのだと。目を爛々と輝かせ一心に見つめる。
数秒か数分か数十分かどれだけの時間がたったのかわからない。気づけば終わっていたのだ。それほどまでにすごかった。
「おや、こんな山奥に小さな少年が来るだなんて
どうしたものか」
彼は僕のことを気づいていたのだろうか。いや、そんなことは関係ない。無色だった毎日が今日で変わるかもしれないのだ。ハロルドは急いで頭を下げて近寄った。
「僕、ハロルドって言います。外から来た人が気になって来ちゃいました。」
彼は一瞬悩んだ素振りを見せたが手招きしてくれた。
「山奥に住んでいる私に会いに来るなんて君は少し変わっているね。誰も気に留めないと思っていたよ。」
微笑んだように見えたが仮面越しだからそれすらもわからない。ただ、仮面奥の目の色だけはハロルドにでも見えた。綺麗な黒色だった。漆黒を思わせる
深い黒。何色にも染まらぬ漆黒がそこにはあった。
「僕を弟子にしてください。」
急だっただろうか。いやしかし、ここで言わねば
チャンスは巡ってこない。何も変わらない日常を打破するにはこれが近道なのだと幼い少年は本能的にそれを理解していた。
「...これは驚いた。見ず知らずの山に篭ってるだけの私に弟子入りとは。だがダメだ。私は人の関わりを持ちたくはない。弟子なんてそんな大層な人物ではないのだ。他を当たってくれたまえ」
「なんでもします。弟子にしてください。」
何がなんでも彼の技術、騎士なのか戦士なのか狩人なのかそれすらもわからない。ただ、かっこいいと思えた。綺麗だと思った。自分が目指すのはこの人なのだと思えた。
彼は悩んでいる様子を見せた。
「よし、わかった。弟子は取らないが勝手に盗み見ることはできるだろう。私はここで生活している。
いつでも来なさい。」
彼には一体何が見えたのか。弟子入りはできなかったが彼の動きを見て真似ることができる。今はそれだけでもいい。
「それと、私のことは『先生』と呼びなさい。弟子にはしないが呼び名がないと困るだろう。」
それだけ言うと彼は小さな古屋に帰って行った。
先生???ハロルドは思った。師匠と弟子の関係と変わらないのではと。
憧れの先へ立ち上がれ ハロハロ @hallohallo
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