憧れの先へ立ち上がれ
ハロハロ
第1話 村
何かに憧れたことはあるだろうか。
人はみな一度は何かに憧れ挫折を繰り返し諦めてしまう。
ごく一部のものしかその先には進めないのだ。
「今日も行ってくるね」
誰の返事もないことはいつものこと。小さな農民の次男。畑の仕事もほどほどに出掛けてばかり。毎日同じことの繰り返し。誰からの期待もない。
それでも子供の意地と言うべきか、家から出る時は挨拶だけはしている。これも『先生』の教えなのだ。
自分は家族と違う道を行く。今は最低限の手伝いはしているけど、ただそれだけなのだ。
いつか自分の足で巣立っていく。この小さな村、
その中でなんと変哲もない家から出ていくと宣言して。
何もないが名前はある村それが『アルテーナ』
誰がつけたのかわからない。気にする必要もないのかもしれない。ただ、名前はあるそれだけなのだ。
村の中心には川が流れ、かつてはそこそこ名産と知られていた小麦も隣村のブランド戦略によって
あっけなく沈んでいった。まるで泥舟のようだ。
小麦の生産はあるが他に勝てるものもない、川があり山がある。自然豊かなのは間違いない。
ただ、若者にとっては退屈でしかないのだ。
そんな村の端、山の奥の方に小さな古屋があった。
そこに来たのが黒髪黒目の少年ハロルド・リーン
その少年だった。
「遅れました先生」
「特に時間の縛りはあるわけではないですが、約束を守ることができないのは減点ですよ、ハロルド」
ハロルドを迎えたのは全身を包むような大きなコートを身に纏い声は男だとわかるが仮面をかぶってるせいか詳細の姿はわからない。
「ご、ごめんなさい。」
加えてハロルドは彼の名前すら知らなかった。ただ、『先生』もしくは..
「申し訳ございません、と言いなさい。言葉遣いは大事です。言葉は丁寧に、所作は優雅にそれだけは忘れてはいけませんよ。」
「申し訳ございませんでした、先生」
まぁいいでしょうと彼がつぶやくのが聞こえた。
「では、今日も準備運動に山でカブトムシを4匹捕まえてきなさい。特別時間は儲けは致しませんが
早く捕まえればその分剣の稽古に時間を使うことができるのです」
「いつも通りですね先生。それでは行ってきます」
全速力で山を走るハロルドの背中を見つめて、
静かに彼の帰還を待つ。いつもの準備運動、それに彼なりの遊びを取り入れた。
少年の才能を伸ばすための訓練の一つである。
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