投擲スキルMAXの錬金術師は全てを放り投げてでも白米が食べたい 〜なのに女の子になってしまい「ふっ、面白え女」みたいな面倒臭い奴らに絡まれているんだが?〜
第10話 転生者は『もう何を投げたらいいか』を投げた
第10話 転生者は『もう何を投げたらいいか』を投げた
目が覚めると見知らぬ真っ白な天井。
ぐつぐつと煮込まれる何か。湯気の良い香り。これは──
「あ、ざいりょう、おきた」
錬金術中かと思いきやクッキングタイムだった。生命の危機だった。
寝かされていたベッドから飛び起き、あたりを確認すると、どうやらここは保健室のようだ。なんで保健室に人間煮込めそうな鍋と火があるんだよ。
「錬金術師の新キャラ登場とかじゃねえの!? 前回の流れからなんでこうなるの!?」
「おで、ぐつぐつ、にこむ、ごはん、つくる」
大柄の男に指を刺される。
ねえなんで? なんでこの学園には猟奇的な奴しかいねえの?
「たべる」
「うお、うおーー!?」
襲いくる大男にその辺の薬品をぶん投げた。おで野郎の顔がめり込む。
「おで、つよいおんな、すき。おもしろい」
これ以上モテたくない。ダッシュで逃げるがここで気がつく。女の歩幅って狭い。こんなところで女になって悔しいを噛み締めたくなかった。
躓きそうになったその時、チョークが飛んできた。チョークはおで野郎の顔面に再びクリティカルヒットを決めた後に、弾けて煙が広がる。
「大丈夫大丈夫。麻酔チョーク麻酔チョーク」
チョークを投げた男の方を見ると、父親くらいの年齢らしき眼鏡白衣の教師だった。
「やあハク•マイスキー。私は魔法学の教員アカ•デミエ。人々からは元凶おじさんと呼ばれている」
「元凶おじさん!?」
助けてくれてありがとうございますとかより先に復唱が口から出て来てしまった。元凶おじさん!?
「君は友人達に医務室に運ばれて来てよく眠っていたんだけど、偶然横のベッドで寝ていた人肉食主義の男ニック•オッディを私がうっかり起こしてしまったんだ。いやすまなかった。私が唐突にちゃんこ鍋が食べたくなって医務室でちゃんこキメてたばかりに彼の食欲が暴走したようだ」
「元凶おじさん!」
偶然隣に人肉を好む男が眠っているな。医務室でちゃんこ鍋をキメるな。色々とツッコミたいことが多すぎてまとまらねえ。
「あ、大丈夫大丈夫。私が食べようとしていたこの肉はちゃんと牛のだよ」
「そこじゃねえよ!」
「それにしても君、入学前の書類では男性で申請してあるのにどう見ても女の子だね?」
「入学式の日に通り魔的に女体化魔法をかけられたんだよ!」
「それは大変だったね。……あ!」
大混乱の俺をよそに、元凶おじさんはポンと手を叩く。
「もしかしてアレかな、私が教え子に教えた『美少女になる魔法』じゃないかそれ」
「げ、元凶おじさん!」
「それにしても君、投擲スキルがMAXじゃないか。こんな人居るんだなあ。……あ!」
「投擲スキルがMAX?」
またもや復唱する。視界の隅で肉塊がぐーすか転げているのをものともせず、ペラペラと喋るこの教師についていけない。そして閃きの手をやめろ。
「もしかしてアレか、女神様に願い事叶えてもらえるって聞いて、私がお願いしたアレ。投擲スキルMAXの人とダーツしたいなっていうアレが叶ったのかな」
知らねえよ。
「まあとりあえず今ご飯炊いたところだから食べなさい。ちゃんこ鍋と合うよ」
炊飯器から茶碗にこんもり白米が盛られる。もう何がなんだか分からんからとりあえず食べた。
そうして俺は白米への愛に目覚めた。
投擲スキルMAXの錬金術師は全てを放り投げてでも白米が食べたい 〜なのに女の子になってしまい「ふっ、面白え女」みたいな面倒臭い奴らに絡まれているんだが?〜 しろしまそら @sora_shiroshima
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。投擲スキルMAXの錬金術師は全てを放り投げてでも白米が食べたい 〜なのに女の子になってしまい「ふっ、面白え女」みたいな面倒臭い奴らに絡まれているんだが?〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます