一般通過JKのゆるっとダンジョン散歩配信～モンクが器用貧乏なハズレジョブって本当ですか？ソロで何でもできる万能ジョブなんですが～

闇を暴く系配信者、ヴェノム①

「よーみんな、聞こえる？」

　配信画面にはパンな格好をした女性、ヴェノムが映し出されている。

　ここは、人気配信者として名高いヴェノムの配信だ。

　ヴェノムは探索者の闇を暴くことをモットーに活動している探索系配信者である。

　たとえ炎上しようと真実を伝えるのが信条だ。

　賛否両論な存在ではあるが、ファンからの支持は厚い。

「今日はちょっと趣向を変えて……」

　いつものパンクファッションではない。

　身につけているのは真っ白な武道着、黒帯がきりりと締められている。

「セミナーに参加してきたんだよね」

　画面の隅に、小さく「怪しい古武術セミナーへ侵入！？」の文字。

　・ヴェーちゃん、その恰好なに？ｗ

　・似合ってるじゃん

　・髪色派手だし似合わねーｗ

　コメント欄がざわつく。

「似合ってないって？　けっこう気に入ってんだけどなー」

　不満そうに言いつつ、画面に向かいポーズを決める。

「で、本題。参加したのは天御心流っていう武術のセミナーなんだ」

　・天御心流？聞いたことねーな

　・どこの武術だよｗ

　・怪しさ満点じゃんｗｗｗ

　リスナーからは聞き慣れない流派の名前に困惑の声が上がる。

「まあ私も知らなかったんだけどさ。でも、結構面白かったんだよね」

　ヴェノムは武道着の袖をまくり上げると、腕をさすりながら言葉を続ける。

「セミナーの内容？　ざっくり言うとさ、脱力がメインなんだよね」

　・脱力って力抜くやつ？

　・武術で力抜くって逆じゃね？

　・ヴェーちゃんマジメにやってんのかｗ

　脱力という言葉に、リスナーはピンとこない様子。

「そう、力を抜くんだよ。これがけっこう難しくてさ」

　ヴェノムは立ち上がると、腕を大きく振り上げる。

「ほら、こうやって腕を振るでしょ。で、落とすときに力をするーっと抜くんだ」

　・なんかヤバそうｗ

　・ほんとに武術なのか？ｗ

　・パンクさんの腕細いな

　・関係ないだろｗ

「で、その衝撃をミットで受けてもらったんだけど……マジで重かった」

　驚きを隠せない様子で、彼女は目を大きく見開く。

「ミット持つ手が痺れるくらいの威力。舞夜ちゃんの細い腕であの衝撃出すとかヤバくない？」

　・え、マジで？

　・そんな威力出るわけないだろｗ

　・でもヴェーちゃんが言うなら本当なんだろうな

　・舞夜ちゃんis誰

　信じがたい話に、リスナーも信じるものと信じないもので分かれた。

「信じられないよな。私だって最初は半信半疑だったし」

　そう言いながらも、彼女の目はきらきらと興奮に満ちている。

「脱力のメカニズムがどうのこうの、理屈は難しくてよくわかんないけどさ。

　とにかく、誰でもあの威力出せるようになるんだって。すごくない？」

　・誰でもって、ヴェーちゃんでもってこと？

　・ヴェノムが武術マスターしたら最強じゃんｗ

　・いやいや現実見ようぜｗ

「その通り！　私だってマスターできるかもしれないの。

　舞夜ちゃんなんてJKなのに、めちゃくちゃ強かった。多分、私より全然強い」

　そう言って、彼女は嬉しそうに笑う。

「ほんと謎だらけの武術なんだけど、面白いんだよね。科学的にどうなのかとか、興味出ちゃってさ」

　・マジでハマってんじゃん

　・いつもの探索者糾弾配信と違って新鮮だなｗ

　・洗脳された？ｗ

「あ、もちろん闇は探しつつね。今回は特に見当たらなかったけど。

　開催者の女の子、舞夜ちゃんって言うんだけど、あの子、強いし教え方も上手いんだよね」

　ヴェノムの口調には、珍しく尊敬の念が滲む。

「まあ、とりあえずセミナーの感想は以上！　面白かったし、また機会あったら参加したいかも。

　今日は武術の話で落ち着いた感じだったけど、次回からはいつも通り探索者の闇暴いていくからよろしくね！」

　そう言い残し、彼女はさっさと配信を終えた。

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