彼女

私は彼女の前で今日も泣く。これで3度目だ。そして今回も「そんな男別れて正解だよ。」と言ってくれた。私は知っている。彼女が私の彼氏に手を出していることを。彼の家にわざとリップを置いて帰ったことも。彼の体にわざとキスマークをつけたことも。全部全部知っている。彼女は私のことが好きだ。私と彼を別れさせるためにたくさん頑張ったこと。彼女がそういうことをするだけで私の心はひどく高揚する。私は彼女のことが大好きだ。私と彼氏を別れさせるために必死な姿が私をゾクゾクさせる。私のことが大好きなんだと実感する。その姿がたまらなく好きでまた彼氏を作ってしまう。彼氏ができたと報告する時の彼女の絶望する顔がたまらない。それを押し殺して私に「おめでとう。」と言う彼女が愛おしい。


「私の方が良いのに。」


彼女が口にした。やっとだ。やっと彼女の口からその言葉が聞けた。彼女の顔を見ると、言ってしまった。という絶望の表情が見えた。

私は彼女を抱きしめた。


「大事にしてくれる?」


彼女の顔がみるみる明るくなった。


「もちろん。一生大切にするよ。」


彼女はそう言った。

一生手放さないよ。私は彼女を抱きしめながら心に誓った。

私は狂っているのだろうか。

いや、私たちは狂っているのだろう。

愛という呪いに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アイ にゃん @niina3421

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ