百分の百物語

真野魚尾

百分の百物語

 わたしが百話目ですか。お招きいただいてありがとうございます。


 ……ところで、そこのあなた、燭台持っててくれません?


 いやあ、わたし蝋燭の火がトラウマでしてね。自分に火が燃え移る瞬間ってのは、あんまり気分のいいもんじゃないですよね。


 火事じゃないですよ。火葬場です。

 棺桶の中って、あんなに狭いんですねえ。息苦しいったらありゃしません。

 まあ、とっくに息の根止まってるんですけどね。


 ……あらあら、みんな逃げてっちゃ話にならないでしょうに。


 それじゃ、残ったあなたにお願いしましょうかね。

 わたし体がもうないもんで、蝋燭の火を吹き消せないんですよね。

 代わりにあなたに消してもらおうかと思いまして。


 いやあ、ちょうどいい道連れができて嬉しいですよ。


 では、どうぞ吹き消してくださいな。

 さあ早く。


 早くしてくださいよお……

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百分の百物語 真野魚尾 @mano_uwowo

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