第6話
「ちょ、ちょっと船見さ...真維?一回ついてきてくれるか?」
「ん?別にいいけどどうしたの?」
「いや、ちょっと話したいことがあるからさ」
「いいよ分かった!よしくんの行くところならどこまでもついていくよ!」
「しっー!分かったから早く来て!」
最初から最後まで一体何がしたいんだ!?
◇
「よく聞いて船見さん、何であんな事を言ったの?」
「あんな事って?」
まさかの自覚していない!?
相当の天然なのかこの子は!?
「一緒に登校しようって言ってきた事だよ。何で泣きっ面に蜂みたいな事をするの?男子達みんな俺のこと睨んできてたんだけど」
多分あのままあの場所にいたら、俺はリンチをされていたかもしれない。そして俺はミンチになっていただろう。
「だって、ああでもした方がより付き合ってるっぽくない?」
「いや、確かにぽいけど!!でもそんな事までしなくていいんじゃないの!?それにあんな事言うから明日一緒に登校しないと怪しまれるような感じになっちゃったんだけど!」
当然俺と船見さんは普段学校に着く時間なんて別々だし、一緒に登校することなんてもちろんない。
でもさっきの発言のせいで、明日一緒に登校しなかったら周りにもすごく怪しまれるし、プラス俺は彼女との約束を二日連続で守れない屑男認定をされてしまう。
もしそんな事にでもなったら....考えるのはやめとこう。
「?別に一緒に登校したらいいんじゃないの?」
....へ?何を言ってんだこの人は。
「そんなのできないでしょ?お互い家も知らないんだし」
「それだったら多和田くんの住所教えてよ。私が明日の朝迎えに行くからさ!」
ちょっと待てちょっと待て船見さん。
事が進みすぎて、まだ俺の脳の理解が追いついていない。
ええっと、俺の住所を船見さんに教えて、それから明日の朝船見さんが迎えにくる....ダメだ理解できない。
「それと多和田くんの連絡先もついでに教えてよ!その方が後々便利だろうし!」
本当に待ってくれ船見さん!さっきの事さえまだ処理できてないんだぞ!
「ええっと....船見さん?よく聞いてくれる?まずそんな事しなくても誰も怪しまないと思うよ?それに船見さんだってそんな事の為だけに俺と学校に一緒に登校したくなんてないだろう?」
俺だって周りの人達に見られるのは嫌だ。特に男子達には。
教室入る前からあんな怖い視線浴びたくなんてないよ...
「私は多和田くんと一緒に登校したいよ!!」
そうやって船見さんはまた俺を苦しめるのか?
俺ってもしかして周りの人達みんなから嫌われてる?
...実は船見さんのこの偽カップルを演じてくれっていう願いも、俺がしどろもどろする姿を見て笑う為だけにやってるんじゃないか?
そうか、最初からそうだったんだ。何かおかしいなとは思ったんだ。俺なんかを偽彼氏に選ぶのだっておかしいし、何よりも男子達からの告白を避けるためだけにこんな事をしないはずだ。
「...船見さん。偽カップルを演じるっていうの辞めてもいいかな?もともと俺はそんな事聞いてなかったし、全部船見さんが始めた事だし。そんなことに巻き込ませて友達も失わせて、さらに追い討ちをかけるかのようにして俺を苦しめて...何か楽しいの?」
本当はこんな事は言いたくなかった。
でも俺にだって俺の人生があるんだ。船見さんのちょっとしたわがままに付き合って、自分の人生を台無しになんてしたくない。
それに、今ならまだ博道との仲も修復できるだろうし。それに...
「...そうだよ...ね。ごめん...ね。私のわがままに多和田くんを勝手に付き合わせて...私って最低だよね笑」
「あっ、いや、そんな泣かせるつもりで言った訳では...」
「本当に最低だよね...ごめんね。でもね、これだけは言わせて。別に最初から多和田くんをいじめてやろうと思って始めた訳ではないよ。本当に男子達からの告白を避けたいって思いで始めた事なんだよ。それだけはどうか分かってほしい...な」
...そうか、そうだったのか。
俺もつい怒りに任せて自分が見えなくなっていた。
そうだよ、船見さんはそんな事をする人ではない。
俺は一体何をやっているんだ。
「ごめん、船見さん。疑って。船見さんのカップルを演じてほしいっていうのは本当の願いだって事はよく伝わったから。だから、俺もその願いを叶えるために努力するし、友達との関係も...まあどうにかする。だから泣かないで」
「うん...うんありがと。多和田くんって本当に優しいね。私もお願いしてる側なのに勝手に泣いちゃってごめん。それに一緒に登校するっていうのも多和田くんが嫌であれば全然大丈夫だからね」
「...いや、そのことに関してなんだけど、いいよ。一緒に登校しよう」
俺もいろいろ頭の中にあった事を吐き出したら、すごくすっきりした。
そうだよ。今は周りに誤解されて嫌われてるけど、時間が経つにつれてその誤解を解いていけばいいだけの話なんだ。
それに、船見さんだって長い間男子達から告白されて俺よりも嫌な気持ちだったんだし。
「ほんと?ほんとにいいの!?やったー!!ありがと!!それじゃ明日の朝迎えにいくから待っててね!!」
自分がお人好しなのはわかってる。
でも船見さんの泣いてる顔を見たら、どうしても断れなかったんだ。
学年一の美少女は男子からの告白を断る際、いつも「吉一君と付き合ってるから」と言っているらしい 過去 未来 @asiripa__
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