第5話

いろいろな謎が解けた次の日。

俺は朝からとても憂鬱だった。

何故ならば昨日船見さんに衝撃的な事を言われたからである。


偽のカップルを演じてくれったって...具体的には一体何をすればいいんだ?

お互いに下の名前で呼び合うだけじゃなくてそれ以上のことをしなければならなくなる時もあるかもしれない。そんな時に俺は冷静さを保てるのか?


それにクラスでは唯一の友達だった博道もいなくなり完全に孤立してしまったし.....


あれ、今の俺っていわゆる「ぼっち」ってやつ?


幼い頃からあまり友達はつくってこなかったが、それでも馬の合うやつはいつも一人くらいいた。

博道もその内の一人だったし、高校三年間はぼっちになることはないだろうと鷹を括っていたのに...。


船見さんは自分のせいで俺というインキャから大切な友人を失くさせたということを自覚しているのだろうか?


(...なんかむかついてきたからエッチなお願い聞いてもらおうかな...っていやいやそれは流石にダメだな)


危ない危ない。友達だけじゃなくて理性も失うところだった。


とまあこんなことばかり考えていたせいで昨日の夜はあまり寝られず。寝不足かつ憂鬱という最悪の組み合わせで今日学校に行かなければならなくなってしまったという訳だ。


まあ特に気負いするのではなく、いつも通りの自分でいこう。変に意識してしまうとそれが行動に出て余計怪しまれるからな。


あくまで普通に。普通にだ。



クラスに入ると、やはりまだ男子達からの俺への視線は鋭く、相当俺を恨んでいるように思える。

博道は...無視...か。まあそりゃそうか。自分の告白を応援してくれていた友人が、まさか好きな子の彼氏だったなんて知ったら誰だって怒るだろう。


それでもやはり悲しいものだ。いつも俺が教室に入って席に座ったら、真っ先に肩をたたいて船見さんの話をしてくれてたのに...これからはもうそんな事もないんだもんな。


それに肝心の船見さんはというと...普通に女友達と談笑してるのか。

まあそれくらいが丁度いいだろう。いくら高校生のカップルといえど、教室の中で他の生徒もいる中イチャイチャしてる人達なんてそうそういないだろうしな。


(話す人もいない俺は、全然興味のない読書でもしますかね...)


小説を読むのはあまり好きではない。いつも今度こそは全て読み切ろうと思っても途中で飽きて辞めてしまう。

そんなんだから、いつも国語のテスト赤点ギリギリなんだけどな。


「よーしくん、おはよ!」


....は?いや「は?」では無いんだが、何でいきなり他の人達もいる中で挨拶をしてきた?

そりゃカップルだったらそれくらい普通だろうから、カップルを演じるという点では、船見さんのやっていることは何らおかしい事ではないのだが...それでもいきなり?


そんなことなら「明日挨拶するからね!」ってメールでも送っておいてくれたらよかったのに...って俺船見さんとのメール持ってないんだった。


っていけないいけない!早く挨拶し返さなきゃ!


「お、おはよう船見さ...真維」


今の俺大丈夫だったか!?途中船見さんって呼びかけちゃったけど特に怪しまれてはないよな!?


...うん、大丈夫そうだ。その証拠に男子達が殺すかのようなガンぎまった目で俺を見てきている。

やめろ、博道までもがそんな顔をしないでくれ!


「うんおはよ!...ってよしくん!!今日の朝一緒に登校しようって昨日約束したのに、何で今日一緒に行ってくれなかったの!!」


....船見さ....いや今だけは彼女のことをこう言わせてくれ。









この女は一体どこまで俺を困らせたいんだ!?

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