第4話

「船見さん、僕とはいろいろあって別れて、今は他校の生徒と付き合ってるってみんなに言うのはどうかな?そうすればこんな嘘をつかなくて済むだろうし」


「う〜ん...それができたら私も苦労しないんだけどね」


「ん?どういうこと?今からでもできることだよ?」


「いや〜...実は私付き合ってるってだけじゃなくて、将来の結婚も約束してるって言っちゃってるんだよね...」


「あ〜そうなんだ...それは仕方ないね...って将来の結婚を約束してる!?」


何を言ってんだこの人は!?俺と船見さんが将来の結婚を約束している!?

いきなり話が飛躍しすぎだろ!?


「ちょ、ちょっと待って船見さん。何でせめてでも付き合ってるって嘘までで留めておかなかったの?」


「付き合ってるってだけじゃ男子達諦めてくれなくて。それに「船見さんが別れるまで俺は告白し続けます!」なんてことを言ってくる人も現れてね。

どうしたらみんな諦めてくれるかなって考えてたら、じゃあいっそ私が多和田くんの許嫁だってことにしちゃえばいいじゃない!って思ったの」


いやいや、確かにそうだけどさ!そうだけど許嫁はやりすぎじゃないか!?


「...はぁ〜理由は分かったよ。ってことは、俺と船見さんは結婚する関係性だって周りから認識をされてるって事だね。」


「そゆこと!」


なんでこの人は勝手に人を巻き込んどいてここまで楽観的なんだ。それに...何で俺なのかね?

船見さんと俺じゃ、まったく釣り合わないだろ。

リアル月とスッポンだよ。


「でも、そんな嘘もどうせすぐバレるだろ?やっぱり今からでも本当のことを言っておいた方がいいって」


「大丈夫だよ。そこはバレないようにやっていけばいいんだからさ。だからさっき私のことを船見さんじゃなくて真維って下の名前で呼んでほしいって言ったの」


「...偽のカップルを演じると?」


「大正解!!」


大正解じゃないわ!インキャの俺への負担が大き過ぎるわ!

そりゃ船見さんは陽キャだから簡単なことだろうけど、女子の名前を呼ぶだけでも俺にとってはとてもハードな事なんだ!

まったく、何でいきなりこんな面倒なことに巻き込まれなきゃいけないんだ...


「それでもバレたらどうするの?」


「その時はその時に考えればいいよ。とにかく多和田くんは明日から私の事を学校では真維って呼んでね。私も吉一って呼ぶから。」


「...はぁ分かったよ」


「流石多和田くん!いや吉一くん!」


「いきなり名前で呼ぶな!こっちも色々と準備不足なんだ!」


いくら俺は異性に興味がないとは言え、女子から名前で呼ばれたことなんてないから恥ずかしすぎるよ!

これじゃ船見さんと話す時は毎回顔が赤くなってしまう。


今日帰ったら鏡の前で猛特訓が必要だな...


「とにかく!!3年間だけだから!3年間だけ私の彼氏を演じ続けてて!そして高校卒業したら何でもしてあげるから!」


「長過ぎるわ!それに...何でもするって具体的には何をしてくれるんだ?」


「う〜ん...エッチなこととか?笑」


「エッ、エッチ!?そんなふしだらな事を女子が言うもんじゃないぞ!」


いきなりなんて事を言い出すんだこの人は!漫画の世界みたく本当に鼻血が出るとこだったぞ!


「嘘だよ、嘘。そうだね〜まあ私ができる限りの感謝を伝えるよ。今回のことも私が多和田くんに言わずに勝手に始めたことだからさ。本当に多和田くんには感謝してるし、それに申し訳ないと思ってるよ」


「...そりゃ船見さんのお願いは断れないからな。断ったら社会的に抹殺されそうだし(小声)」


「そう言ってくれると思った!ありがと!じゃあ明日からよろしくね!吉一くん!」


「よ、よろしく。ま、ま...真維さん」


こんなんで俺は高校3年間無事にバレないでやっていけるのだろうか?

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