「マナちゃんそろそろ時間よ~」

「えっ、もうそんな時間ですか?これだけやっちゃいますね!」

「ありがとっ」

 夕方になり、ターゲットの仕事場付近まで戻って来た。実際に戻って来たのは1時間ほど前なのだけれども…


「お待たせしました、カフェラテとタルトタタンです」

「ありがとうございます」

 勤務先の飲食店がこの時間になるとカフェに変わるらしく、様子を見るついでにコーヒーブレイクをしに来ていたのだ。分かりやすい場所に色んなキーホルダーやステッカーを貼った鞄とパソコンを置いて。

 しばらくケーキのおいしさに浸っていると、斜め前の方から彼女の視線を感じた。この感じは、絶対話しかけてくる。だからあえて気づかない振りをしておく。

「あの…お仕事中すみません」

 ほら掛かった。

「…あ、はいなんでしょう?」

「フェイクフェイス、お好きなんですか…?」


 フェイクフェイス。若い女の子を中心に人気のアーティストグループで、私が鞄やパソコンに拵えて来たキーホルダーたちは、このグループのグッズだ。

「えぇ。この年でお恥ずかしながらはまってしまって…」

「私もなんです…!もしかして、今日のショップに行かれるとかですか?」

「あなたも?」

「はいっ、でもきっと若い人ばかりで浮いちゃわないかなって…」

「…一緒に行きませんか?」


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