”おじゃまします~”

”ヒロキひさしぶりですっ。お仕事お疲れ様でしたっ”

”ミナちゃんもお仕事お疲れ様。お土産買ってきたよ?”

”えっ、ありがとうございます!お風呂入れてますけど、先に入ってきますか?”

”うん、そうさせてもらうね。ありがとう”


 やっぱり、あのマンションの中には女が住んでいた。葉山さんの夫、ヒロキがキャリーケースを駅に置きっぱなしにしているところを見ると、自身の服や日用品をすでにあの部屋に置いているのだろう。まだ彼女の姿は見ていないので、どう動くかはしばらく見張らないといけないなぁ。


”んん!相変わらずマナの作るものは美味いなぁ”

”ふふっ、ありがとうございます。ヒロキさん、また1週間ここにいてくれるんですか?”

”うん、マナが良ければだけど…いいかな?”

”はい!もちろんです!この1週間仕事がんばれそうです”

”こんなことで喜んでくれるなら毎日来ちゃうよ”

”私はそれでいいのにっ”

”まぁ、いずれね?それまではちょくちょく泊りに来るから、それで我慢ね”

”はぁい”


 いずれ。というのはいずれ一緒に住むという事なのだろうか?マナと呼ばれた女性はヒロキが既婚者だと知っているのだろうか…いやこれは知らないな。私の耳に伝わってくる彼女の声から私はそう結論付けた。そしてヒロキの方は様々な嘘をついている様子。


”私、明日7時に家出るので、かぎ渡しておいていいですか?少し買い物をしてから帰る予定なので、多分私の方が遅くなると思いますっ”

”そっか、帰る時間言ってくれたらそこまで迎えに行くよ?”

”本当ですか?じゃあまた夜連絡しますね!”


 えっ、朝の7時に家出るの…⁉今はもう10時前だから、家帰ってお風呂入って…睡眠時間短いじゃないの。もう2人とも家を出る感じはないし、さっさと帰ろう。


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