「サクラさん、そろそろ帰りなよ~」

「もうそんな時間ですか?じゃっ、帰りま~す。あ、明日私朝から調査行ってくるんで、タイムカード押せないです。ずるじゃないんで」

「了解。大丈夫信用してるから」

 今日のうちにあらかたの情報は仕入れたから、明日からは直で情報の精度を上げていく。そして今からは…

「もしもしリンちゃん?私もう終わるけど、今どこいる?え、もう着いてるの⁉分かったすぐ行くね」


 ナカマ食堂へ行く日。




「ごめん遅くなった!」

「全然!早く終わりすぎたから、暑さしのぎで早く来ちゃっただけだから。生ビール?」

「うん!大将お願いします」

「あいよっ」

 ナカマ食堂に着くと、日本酒を片手に出迎えてくれたリンちゃん。彼女は会社の同期で、飲み仲間なのである。仕事終わりに日々の愚痴や相談事を、アルコールを入れて洗い流し合っている。彼女も嘘をつけない性分なので、とても好きだ。

「とりあえずなんか頼もっか。めちゃくちゃお腹すいた」

「私も。今日のお勧めは何ですか?」

「脂ののった太刀魚が入ってますよ。唐揚げがめちゃくちゃおすすめです。貝類は生ホタテしか無いんですよ」

 流石大将。私の貝好きを覚えていてくれている。

「太刀魚のから揚げとかめっちゃ美味しそう…2人前貰う?」

「そうしよっ。あとはお任せします!ホタテもいただきます」

「あいよっ」

 注文を終えた後は、リンちゃんの飲みかけ日本酒と乾杯をした。私ほどではないが、中々な酒豪だ。今日は彼女の恋愛話を聞きに来た。彼女には10歳年上の彼氏がいる。

「で、何がどうしたのよ?」

「あんたの彼氏が羨ましいって話をしに来た」

「は?」

 予想外の議題に言葉が詰まった。ラオが羨ましいって言いに来たって事?

「いやね、カイと一緒に住んで1年になるけど…なんというか、淡白すぎるのよ。愛情表現もないわけじゃないけど必要最低限。優しいしイケメンだし余裕もお金もある。もちろん大好きだけどさ…分かる?」

「ちょっと寂しい。って事?」

「そうそうなの。私たちまだ若いじゃん!あっさりした愛情じゃ物足りないってならない?どちらかというと私はベタベタしたい派だし…ラオ君は真逆じゃん?昔は大人びた人が良いって思ってたけど、それが今になってめちゃくちゃ羨ましい」

 まぁ確かに…ラオはもう結構ですってこちらから言いたくなるくらいの愛情表現だし、何なら私から好きと言えば100倍にして返される。リンちゃんの話には簡単に同情できないくらい2人の彼氏は正反対の性格なのだ。

「お待たせしました~お先にお造り盛り合わせですね。今日はホタテ、よこわまぐろ、赤いかです。こちらがじゃがいもと人参の明太子チーズ焼きとしぐれ煮です」

「えっ、美味しそう…いったん話は置いといて食べよっか」

「OK。大将生もう1つお願いします!」

「あいよっ」


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