2人にうな丼とひつまぶしを出すころにはほかの予約のお客様で席がほとんど埋まっていた。こんな状況でも料理が決まっているので、焦りはなかった。

「鰻ってなんでこんなに美味いんだろうなぁ…。俺特にひつまぶし大好きなんだよ。この出汁で食べる感じ。わさびがほんのり香って最高なんだよ」

「わさびで食べるなら俺は白焼きですね。鰻って、白焼き食べてる時だけ魚を感じられる気がするんですよね…分かります?」

「まぁ、言いたいことは分かるが…じゃあ今食べてる蒲焼は何なんだ?」

「魚じゃなくて鰻なんです。魚とは別で、鰻って言う生き物が別で存在してる感じです」

「…っふ、分からんでもない。お前は美味いもん食べたとき面白いこと言うよな」

「そうっすか?」

 少し向こうからマツさんとシンさんの話し声が聞こえて来た。シンさんの言っていることに内心頷きながら白焼きを焼いていた。確かにシンさんは毎度面白い角度から料理の感想を引き出してくる。まじめな性格だからこその感想なのだろう。料理人としては楽しい話だ。

「大将ご馳走様!今年も美味かったよ」

「最高でした」

「いつもありがとうございます」


 2人と入れ替わりで、また新たな予約のお客様がたくさん入って来た…さぁあとひと踏ん張りか。

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