「よっ、大将来たよ」

「あ、マツさんお待ちしておりました。シンさんもお久しぶりです」

「お久しぶりです」

「カウンターでよろしかったですか?」

「あぁ頼む」

 常連客中の常連客であるマツさん。この人はとにかく人が良い。連れてくる部下の人達もおとなしい人ばかりなので、とてもいいお客様だ。少なくとも3日に1回は店に来てくれるので、名前と顔を間違えようもない。

「メニューは今年も変わってないかな?」

「そうですね、あ、今年は茶碗蒸しが入ってます。鰻の蒲焼が入っているので旨味たっぷりです」

「え、美味そうですね…」

 シンさんは、とにかく真面目な印象だ。マツさんほどの口数はないが、美味しいものには目がないらしく、こちらもいいお客様だ。

「それじゃあうざくと茶碗蒸しを2つずつと…ひつまぶしと丼、どっちにする?」

「…では丼で」

「俺はひつまぶしでお願いするよ飲み物はいつもので」

「あいよっ」

 この時間帯で予約が入っていたのは3組だけだったので、すぐに用意が出来た。スチームコンベクションオーブンに茶碗蒸しを入れ、鰻の蒲焼を温める。塩水につけておいた打ちきゅうりを絞って三杯酢と合わせる…俺も食べたいなぁ。

「お待たせしました、お先にうざくですね~。瓶ビールと日本酒久保田です」

「ありがとうございます」

「相変わらず旨そうだなぁ…いただきます」

 うちの店に来て、カウンターで食事をしてくれるお客さんは結構多い。個席でゆっくり食事をしたい人が多い中、店主と話しながらの食事を楽しんでくれる人が沢山いるのは嬉しい限りだ。何より、美味しそうに食べている姿をすぐ側で見られるのは仕事がはかどるんだ。

「茶碗蒸しお待たせです」

「うわぁ…」

「これまた綺麗だなぁ…んん!旨い…!大将、うざくも茶碗蒸しも最高だよ」

「ありがとうございます」

 この茶わん蒸しはマツさん達に絶対気に入ってもらえると思っていた。鰻の旨味が詰め込まれた自信作だ。

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