「うわ美味!!フワッフワだしなんだこの脂の量は…」

「良い奴選んで焼きましたんで、かなり肥えた奴ですよ」

「ありがとうございますっ、サクラこれ早く食べてみ?またビール足らなくなるかもしれないけど」

「…確かにビール足らないね。大将お願いしますっ。すっごい美味しいね、カマス…?初めて聞いたけど、これはまっちゃうかも。えっ、鱧も凄いよ!カマスに負けないくらいにフワッフワ。梅肉醤油めっちゃ合う」

 よほど気に入ったのか、俺が食べる頃には鱧が残り1つだけになっていた。喜んでくれているのならそれでいい。

「…ん?美味い…トウモロコシご飯って洋風な響きだったのに」

「えぇ、和風だしで炊き上げたご飯を仕上げにバターを加えてコクを出しました。中々行けるでしょう?」

 サクラもトウモロコシご飯に興味津々だ。1口食べては1口ビールを飲んで…あれいつの間にか梅酒に変わってる。

「すっごい美味しいですこれ、私もこんな風に料理できたらいいのになぁ」

「サクラのご飯も美味いよ?大将とは系統が違うだけじゃん」

 サクラは和食を作るのが苦手なだけで、イタリアンや洋食、韓国料理は本当に美味しいのだ。

「美味しかったぁ…なんか、いっぱい喋りながら食べたら結構おなかいっぱいになっちゃったね。酔いより先に胃袋の限界が来ちゃった」

「だな。今日はこれくらいにしとくか~。大将ごちそうさまです!また来ますっ」

「ありがとうございます、またお待ちしております」



 季節のせいか、普段気温の変化の少ない地下道がむっと湿度が高く感じる。今サクラにくっ付いたら絶対

「暑いもうちょっと離れて」

 なんて言われるから、いい距離感を保って手をつなぐ。

「ごちそうさまでした」

「いいっていいって。明日休みだと思ったら心が軽いわ…」

「本当だね」

 美味い飯を食って、他愛もない話をしながら夜遅くに家に帰る。毎日暗闇で仕事をしているのにこんなに幸せで良いのかとたまに不安になる。幸せな時こそ、良くない事が起きそうな予感がするのも嫌なのだ。

「ラオ携帯鳴ってない?」

「んぇ?いや電話じゃないから急ぎではないからいいよ」

「そう?ならいいけど」


 やっぱり、幸せな時こそ良くない事が起きる。

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