「ラオ、その包丁研いだらもう今日は帰っていいぞ」
「えっ、良いんすか?」
「あぁ。今日彼女と飯行くんだって言ってただろ?準備していってこい」
「あざっす!」
ジョーさんが気を利かせて、サクラとの食事の時間にゆとりを持たせてくれた。この前の休日出勤が最高の1日だったようにも思えて来た。早くは帰りたいけれど、包丁の手入れに妥協はしたくないので、急ぎつつ入念に包丁の輝きを取り戻していく。しのぎの部分が鏡のように反射したことを確認して、今日の業務は終了だ。
サクラは昼までの日だったらしく、既に準備を終えているらしい。
「いらっしゃいませ。あ、ラオさんじゃないですか。サクラさんもお久しぶりです」
「お久しぶりです!」
「カマス食べに来たんです。ありますか?」
「えぇございますよ。今日は奥の席予約で埋まってしまっているんでカウンターだけになっちゃうんですが、よろしいですか?」
俺とサクラが2人で来ると、大将は気を利かせて奥にある席を用意してくれていた。カウンターはカウンターで対象と話しながら食事ができるから楽しくていい。
「全然いいっすよ!サクラ何飲む?」
「私生ビールお願いします」
「俺はジンジャーエールで」
俺とは正反対で、サクラはかなりの酒豪だ。何もかもが彼女と反対で、それが逆に仲良しの秘訣なんじゃないかとも思う。
「カマス以外で今日のお勧めありますか?」
「綺麗な鱧が入ったので、湯引きなんてどうでしょうか」
鱧…!!
「鱧良いですね、じゃあそれと他何か適当にお願いします」
「かしこまりました。サクラさん貝類がお好きでしたよね?」
「貝大好きです」
「ばい貝の旨煮が最高ですよ。造りでしたらサザエなんかも」
「えぇ最高…大将のお勧めの貝いっぱいください」
「あいよっ」
先に用意してもらった飲み物で、サクラと乾杯をする。
「かんぱーい」
「ん~!うまぁ…生ビール久しぶりかも。飲む?」
「おぶって帰ってくれるって言うなら飲むよ?」
「それは無理」
俺とサクラはこの店で知り合ったのだ。もう3年も前の話だが、お互いいい意味で変わっていない。そして、ここに通っているという事だけでメリットもあるのだ。
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