カマスの他に、なすの煮びたしやひじきと大豆の煮物などが運ばれてきて、だしのいい香りが鼻を突いた。

「んん~美味っ!ジョーさんナス好きでしたよね?」

「よく覚えてたな。俺にナスを渡し続けたら一生食い続けられる自信はある。特に大将の作る煮びたしは最高なんだよな」

「ありがとうございます」

 ナスで胃袋を慣らしたところで、本命のカマスへと箸を移した。皮目に細かく切り込みが入れられていて、炙った焦げ目が綺麗な模様をしていた。切れ目の間にたまった脂がキラキラと光っている。

「うわ旨…カマスの炙りなんて初めて食べたっすけど、これヤバいっすね、えっ醤油はじかれるんですけど!」

 皮目の香ばしさと柔らかくて濃厚な身が下にまとわりついて最高に美味い…生姜醤油がこんなにも合うとは知らなかった。というか、普通の居酒屋なんかでカマスの造りなんておいてるところがないから、生で食べるおいしさを初めて知った。

「カマスって今が旬なんですか?」

「もうすぐですね。でも旬よりもその前後の方が脂が乗っていて旨いっていう事はよくあるんですよ。お待たせしました、鱚の天ぷらですっ、隣がトウモロコシの天ぷらと新玉とごぼう、人参のかき揚げです。塩と天だしお好きな方でお召し上がりください。あとはぼ目の炊き込みご飯と、しぐれ煮、お豆腐の赤だしですね

「うがっ…美味そう過ぎる…」

「どっから声出してんだよお前は…ん~!これは旨い!鱚ってこんなにフワフワだったか…」

「やばいっすよ2回噛んだら無くなりました旨すぎます大将」

「ありがとうございます」

 丁寧に開かれた鱚は、全く小骨も気にならなくてフワッフワで塩との相性抜群だ。天ぷらと一緒に出された塩は、先ほどの粗塩とは打って変わり、雪塩と呼ばれる非常に粒子の細かいものだ。名前の通り雪のようにフワフワなのだが、海の旨味のようなものを感じられる気がするし、天ぷらとの相性が非常に良い。

「かき揚げもトウモロコシも最高です!トウモロコシとしぐれ煮、一緒に食べたらめちゃ美味いですよこれ」

「お前邪道な食べ方したな?せっかくのトウモロコシがかわいそうだぞ。ねぇ大将」

「料理は色々な角度から楽しむのも必要ですからね、それぞれの食べ方で召し上がっていただければ良いかと」

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